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【主張】中小企業の賃上げ 税制拡大など手厚い支援に期待
コロナ禍で傷んだ暮らしと経済の立て直しに向け、賃上げを着実に進めたい。
10日に決定した2022年度の与党税制改正大綱に、企業の賃上げ促進策が盛り込まれた。
基本給やボーナスを含めた賃金などの総額を増やした場合、その増額分のうち、大企業は最大30%、中小企業は最大40%を法人税から控除する。これは、過去最高の控除水準だ。
賃上げは、国内総生産(GDP)の半分以上を占める個人消費を伸ばすことで企業利益を拡大させ、一層の賃上げにつなげる「成長と分配の好循環」を生む手だての一つである。
ここで必要となるのは、企業が賃上げの原資を作り出すための支援策である。このため公明党は税制改正論議の中で、賃上げに積極的な企業に対する控除率の拡大を訴え、今回実現することができた。
とりわけ重要なのは、日本の全企業数の9割以上を占め、雇用の約7割を支える中小企業の賃上げを促すことである。
中小企業は、収益に占める人件費の割合を示す労働分配率が大企業より高いことから、賃上げの原資を確保するためには手厚い支援が欠かせない。
現在審議中の今年度補正予算案には、生産性向上を後押しする「ものづくり補助金」や販路開拓などを支援する「持続化補助金」などが盛り込まれている。
税制による支援と合わせ、中小企業が賃上げに取り組める環境づくりに注力することが重要だ。
これに関連して公明党の山口那津男代表は10日の参院代表質問で、法人税を納めていない赤字企業についても、賃上げに挑戦する場合は重点的に支援するよう要望。岸田文雄首相は「ものづくり補助金や持続化補助金の補助率を引き上げる特別枠を設け支援する」と応じた。
政府には、制度の丁寧な周知と相談体制の一層の拡充を求めたい。
また、賃上げのため製品価格を引き上げたい中小企業もある。政府は、大企業が下請け企業に妥当な対価を支払うよう取引の適正化に向けた監督体制を強化すべきである。