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【主張】コロナ禍と自衛隊 専門性と機動力で対策に貢献
「自衛隊のマンパワーを投入して接種会場を作ることは極めて大事だ。自治体の負担を軽くし、接種のスピードを増すことが期待できる」
公明党の山口那津男代表は4月、自衛隊の新型コロナウイルスワクチン大規模接種センター開設に関し、その重要性を記者会見で訴えた。
5月に東京都と大阪府に開設された同センターは期待通りの成果を上げ先月末に役割を終えた。しかし、今後も自衛隊の専門性と機動力が必要とされる可能性もある。自衛隊の災害派遣として実施される感染症対策支援が円滑に進むように、衛生機能の強化など補正予算と来年度予算で十分な措置を取る必要がある。
コロナ禍で自衛隊は、昨年から全国規模で災害派遣を続けてきた。昨年2月には横浜港に接岸したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で感染者が確認され、自衛隊は医官などを派遣。乗員・乗客約3700人の感染対策を支援し、派遣隊員からは1人の感染者も出さず高い能力を示した。また、自治体職員への感染防止教育を33都道府県で実施、宿泊施設で療養する患者の食事配膳もした。さらに、離島の患者の航空輸送も約100人に上った。
大規模接種センターは6カ月間で全国の総接種回数の約1%に当たる延べ約196万回の接種を実施。日本のワクチン接種率の向上に多大な貢献をした。
公明党が深く関わった災害派遣もある。昨年5月、自衛隊に1台しかなかったCT(コンピューター断層撮影)診断車(移動CT車)の長崎県への派遣だ。
同県岸壁に接岸中のクルーズ船で集団感染が発生した。当時は急激に重症化する患者を見分けることが難しい状況だったが、CT検査なら容易に判断可能との知見に基づき、秋野公造参院議員が移動CT車の派遣を提言した。乗客はなく乗員620人の感染対策でCTは威力を発揮し、死者は1人も出さなかった。昨年度の補正予算では移動CT車2台が計上された。
自衛隊は水害など自然災害が相次ぐ中でコロナ禍に対応してきた。日頃の訓練と充実した装備があってこその成果である。自衛隊の専門性と機動力にさらに期待したい。