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自治体と企業で若者の奨学金返済を支援
地方創生へ基金創設
地方に就職した若者の奨学金について、自治体と地元企業が連携して返済額の一部を補助する奨学金返済支援制度が各地に広がっている。特別交付税を活用した取り組みで、地方創生を後押しするため公明党が推進したものだ。制度の普及状況や若者の声を紹介する。
地元就職、定住など条件 国は交付税で後押し
「この制度のおかげで安心して仕事に打ち込めます」。こう喜びを語るのは、鳥取県の奨学金返済支援制度を利用する20代の女性だ。大学時代、奨学金の返済に不安を抱えながら卒業後の働き口を探す中で、同制度の存在を知り、県内就職を決めたという。現在、食肉生産会社で働く。
鳥取県の支援制度は、県と地元企業で「未来人材育成基金」を設置し、日本学生支援機構などから奨学金を借りた人を補助。無利子を借りた場合は貸与総額の2分の1(有利子は4分の1)を補助(最大216万円)している。制度を利用するには、製造業や保育士など県内の対象業種・職種に就職後、8年以上継続して勤務し、定住の見込みがあることが条件だ。
鳥取県は15年度から全国で初めて奨学金返済の支援制度を導入。以来、257人が同制度を使って県内の企業に就職している(昨年12月末現在)。
財源となる未来人材育成基金は、自治体予算と対象業種・職種に関連する県内の団体や企業からの寄付金で賄う。県外の企業からは企業版ふるさと納税を活用して寄付を集めている。これまでに102件の団体・企業から総額約4500万円が寄付されている(同)。
奨学金返済支援制度は、自治体によって対象とする奨学金の種類や、対象者の要件、支給金額などが異なるが、制度の仕組みとしては、鳥取県のように自治体と地元の産業界が基金を設置して実施するケースが多い。この場合、自治体が負担する金額の2分の1程度が国からの特別交付税によって措置されている。
32府県300市町村が導入
国は、自治体が奨学金の返済支援のために基金を設けた場合、特別交付税を措置する仕組みを15年度から導入している。地方創生に向け、地域産業の担い手確保や若者の定住促進が狙いだ。
初年度は鳥取県のみの実施だったが、16年度は18県、17年度は24県、18年度は32府県までに拡大。また、市町村レベルでも、「300を超す自治体で同様の取り組みが広がっている」(内閣官房)という。
対象を広げるなど制度の拡充に独自に取り組む自治体もある。
自動車部品や医療機器など、ものづくりが盛んな栃木県は、県内の製造業に就職する大学生らへの奨学金の返済支援(最大150万円)について対象を拡大。これまで日本学生支援機構の第一種など無利子の奨学金に限定していたが、18年度からは第二種やその他の貸与型奨学金にまで対象を広げた。18年度の募集分は、来月8日まで申し込みを受け付ける。
今月27日、都内にある栃木県の出先機関で、首都圏の学生の就職相談に応じる「とちぎジョブモール東京サテライト」を訪れると、担当者が来場者に奨学金の返済支援制度を熱心に説明していた。
相談に訪れた同県出身の大学3年生の女性は、「奨学金を借りている身としては、とても魅力的な制度。申し込もうと思う」と話していた。
党青年委、VAに掲げ拡充めざす
日本学生支援機構の調査(17年11月発表)によると、奨学金を借りている大学生は37.8%で、短期大学、専修学校(専門課程)では4割を超す。平均貸与総額は無利子型で237万円、有利子型では343万円に上る。完済までの平均期間は16年とも言われ、毎月の返済が卒業後の生活に重くのしかかる。
公明党青年委員会は、若者や学生との懇談会を全国で開催する中で、経済的な理由で多くの若者が奨学金の返済に苦労している実態を踏まえ、支援策の拡充に力を注いでいる。
その一環として、現在、党青年委が各地で実施している若者向け政策アンケート「VOICE ACTION(ボイス・アクション=VA)2019」。VAの政策項目の一つに奨学金の返済支援を掲げ、若者の声を募っている。