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2021年11月23日

待たれる実態解明、新型コロナ後遺症

新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数が減少している。しかし、感染後に長期間続く「後遺症」患者の増加が懸念されている。発生メカニズムも含めて不明点が多い一方で、国内外の調査結果から少しずつ実態の把握が進んでいる。現状を解説するとともに、後遺症疑いの患者を3000人以上診療してきたヒラハタクリニック(東京都渋谷区)の平畑光一院長に話を聞いた。

4人に1人が半年後も悩む。出やすいのは女性

コロナ後遺症の代表的な症状

コロナ後遺症の症状は、倦怠感や息苦しさ、味覚障害、脱毛、集中力の低下など多岐にわたる。中には1年以上続く例もあり、症状に苦しむ人への対応は急務だ。

今年10月には世界保健機関(WHO)が後遺症の定義を初めて発表。「感染が確認されてから3カ月以内に症状が出て、それが2カ月間以上続き、他の病気では説明できない症状」などとした。

また、国立国際医療研究センターは、新型コロナに感染して回復した人にアンケート調査を実施し、回答を得た457人の解析結果を先月に公表。4人に1人は発症から半年後も何らかの後遺症が残り、10人に1人は1年後も症状が残った。

女性の方が男性と比べ、倦怠感は2倍、脱毛は3倍出やすいほか、若者や痩せ形の人の方が嗅覚、味覚障害が出やすいという。

東京都世田谷区が無症状感染者も含む3710人から回答を得た調査では、約半数が後遺症を訴え、男性より女性の割合が高かった。症状別では、男女とも嗅覚、味覚障害が多かった。無症状者では、3割近くが何らかの後遺症を訴えていた。

一方、英ロンドン大学キングス・カレッジの研究チームによる分析結果では、ワクチンを2回接種後に感染する「ブレークスルー感染」が起きても、未接種者と比べて後遺症の症状が長期化するリスクが半減するとしている。

仕事や生活に大きな支障

ヒラハタクリニック院長 平畑光一氏に聞く

――今夏の“第5波”で後遺症の患者は増えているか。

平畑院長 昨年3月から後遺症と思われる患者を診るようになり、同10月に後遺症外来を開いた。体感では今年8月以降、患者が急増した。今も毎日、オンライン診療と合わせて100人程度を診ている。深夜3時まで診療しても希望者全員を診れない状況だ。

――患者の主な傾向や悩みとは。

平畑 以前は40代が多かったが、夏以降は30代が最も多く、40代、20代と続いている。ワクチン接種の進捗の影響もあるだろうが、若年化してきていると言える。症状によって命を落とすことはないが、仕事や生活への支障は大きい。対策を徹底し、感染しないことが最重要だ。

一番多い症状は、倦怠感とブレーンフォグ(思考力が落ちて、記憶障害が出る症状)だ。文字は読めるが頭に文章が入ってこないというようなことが起こる。携帯画面を見ること自体がきつく、病院を調べたり公的支援を求めようにも書類申請すらできないこともある。

継続的に治療しながら少しずつ体調が改善し、ある程度重い症状の患者では7割で顕著な改善が見られる。ただ、寝たきりに近い状態から在宅で働けるまでは回復できるが、元の生活を取り戻すのは難しいケースもあり、現状はとても満足できる状態ではない。

国内の研究、加速が必要

――実態解明が進む現状をどう見るか。

平畑 国際医療研究センターの調査結果は、世界的にも指摘されていたことが国内でも確認されたということだろう。当院でも、患者は女性が男性の1.4倍で、女性が割合的に多い実態は世界共通だ。

国内外で少しずつ知見が集積されている。今後、後遺症の実態把握が進んで、新薬が開発されたり新しい治療法も出てくるだろう。国内でも研究を加速すべきだ。

――厚生労働省の研究班は、後遺症に関する診療の手引き作成を検討中だ。

平畑 作成に当たっては、何より現場の実態に即した内容であってほしい。

WHOは感染者の10人に1人が後遺症になるとの見解を出している。日本では170万人以上が感染しており、少なくとも17万人以上の患者がいることになる。この数を診るには、地域のかかりつけ医が診療できる体制が必要だ。

後遺症は、初期の対応を間違えなければ徐々に回復する方も多い。かかりつけ医が手引き通りに診療しても難しい場合に、後遺症外来で対応するのが合理的だ。

公的支援の周知急いで

――国に求めたい支援は。

平畑 後遺症外来や相談窓口が増えるよう後押しをしてほしい。さらに、公的な支援にたどり着けなかったり、どんなサービスがあるかが分からない人も多い。公的支援の周知を急ぐべきで、一覧表を自治体や病院に配布したり、手続きを手助けできるコールセンターなどが各地にできるよう取り組んでもらえたらありがたい。

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