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【主張】裁判員制の見直し 参加意欲向上へ経験者の声生かせ
国民から選ばれた裁判員が裁判官と一緒に社会的に重大な犯罪を裁く裁判員制度が、2009年にスタートしてから今年で10年になる。国民の司法参加として定着しているが、課題も見えてきた。
特に、国民の参加意欲の低迷が心配されている。
17年度の最高裁調査によると「参加したい・参加してもよい」はわずか15.8%。「義務であっても参加したくない」は41.7%に上った。
その一方で、最高裁による裁判員経験者への調査では、95%以上が「よい経験と感じた」と回答している。国民がこの経験談を聞き、共有できるようにして、参加意欲の向上につなげる必要がある。
今月から始まった法務省の有識者会議では、裁判員の経験の生かし方について議論を深めてほしい。
この有識者会議は、15年施行の改正裁判員法にある3年後の見直し規定を受けて設置された。改正法は、著しく長期になる裁判を裁判員裁判の対象から除外可能にし、また、大規模災害の被災者を裁判員候補から外せるようにするなど、裁判員になることで生じる生活上の負担を軽減した。今回の見直しでは、参加意欲向上に向け、精神的負担感の軽減を進めるべきだ。
市民の立場から裁判員制度の情報発信をしている「裁判員ネット」の調査によると、裁判員経験者から「一度でも裁判を傍聴しておけば余裕ができた」「何をどう議論するのか、ある程度の情報があったら分かりやすかった」などの声が上がっている。
裁判員は弁論を聞き、評議では裁判官と議論して有罪、無罪、有罪なら刑罰の重さも決める。予備知識なしに人の一生を決める裁判に臨むことの精神的負担感は相当なものだ。裁判員経験者の話を事前に共有できる制度が必要だ。
その方法として、裁判員経験者に課せられている守秘義務の緩和がある。
守秘義務は、裁判員の自由な討論を保障し、事件関係者のプライバシーを保護するために必要である。しかし、それらを守るために不可欠な秘密を限定した上で、それ以外については「何を悩み、何に注意したか」が分かるように経験談を伝えられるような制度の構築が期待される。