2021年11月20日
無料のスマホ講習会が好評
操作方法、親切に教える
総務省 デジタル格差解消へ全国展開
4カ月で高齢者ら5万人超が参加
スマホの基本操作を学べる市シルバー人材センター主催の講習会=12日 東京・羽村市
社会のデジタル化が進み、今や生活必需品になりつつあるスマートフォン(スマホ)。その使い方を高齢者らに親切に教える、無料の「スマホ講習会」が各地で好評だ。総務省が今年6月から、全国の携帯ショップやシルバー人材センターなどに委託して開催。9月末までに5万3080人が受講している。講習会を訪ねてみた。
「新しい発見がいっぱい」
「実際に操作して体で覚えるのが基本です。押し間違えても壊れないので、安心してやってみましょう」――。12日、東京都羽村市で開かれた市シルバー人材センター主催のスマホ講習会。講師を務めた同センター会員の西村俊彦さん(75)は、参加者に優しく声を掛けていた。
参加者は自身のスマホを操作しながら、電源の入れ方や文字入力、写真の送り方を学んでいく。受講した女性(70)は、「半年前にスマホを購入したものの、全く使いこなせずにいた。講師の先生が親切に教えてくれて、今日は新しい発見がいっぱい」と楽しそうだ。
同センターの講習会は、3日間で終了(計5~6時間)。対象は60歳以上の市民で、5人の受講者に対して3人の講師を配置する。講師は全員、総務省の研修を経て「デジタル活用支援員」の認定を受けた同センターの会員だ。
携帯ショップなど全国2341カ所
携帯ショップでは行政サービスの利用方法を体験できる=17日 東京・北区
スマホ講習会は、機器を使いこなせるか否かで生じるデジタルディバイド(情報格差)の解消をめざし、総務省が「デジタル活用支援推進事業」として実施している。実施主体に採択された団体に対し、人件費や機器の費用などを補助する形で開催。
今年度は、全国2341カ所で講習会を開催予定。このうち、羽村市のように、シルバー人材センターや地元ICT企業などによる地域主体のものが198カ所。携帯ショップで開催するケースが2143カ所ある。
携帯ショップでの講習会は、各社が独自に行う「スマホ教室」の場を活用し、スマホを使った行政手続きに特化している点が特徴。17日、都内のソフトバンクショップの講習会では、男性2人がマイナンバーの個人向けサイト「マイナポータル」の利用方法を学んだ。講師を務めた同社スマホアドバイザーの作本佐由里さんは、「体験を通して楽しく知識を身に付けられる講習を心掛けている」と話していた。
全国のスマホ講習会の会場や日時は総務省の専用サイトなどから検索できる。
公明、小学校区単位の開催を訴え
総務省は、60歳以上の5割近くに当たる約2000万人がスマホを利用できないと見込む。デジタル社会の恩恵を受けられるよう、機器活用への一層の支援が急がれる。同省は2025年度までの5年間で、スマホ講習会などに1000万人の参加をめざす。
公明党は「誰一人取り残さないデジタル化」を一貫して主張し、支え手となるデジタル活用支援員の充実を政府に要望するなど、スマホ講習会の事業強化を推進。先の衆院選の重点政策には、小学校区単位でスマホ講習会や相談会を開催することを掲げ、その実現に取り組んでいる。
需要高い過疎地での推進が カギ
中央大学法科大学院 安念潤司教授
総務省の事業に助言を行っている、安念潤司・中央大学法科大学院教授に話を聞いた。
外出に困難を抱える高齢者ほど、食料品の注文や、オンライン診療などにも使えるスマホの需要は高い。特に過疎地においてスマホは都市部とつながる“命綱”になる。しかし、過疎地には携帯ショップがほとんどない。使い方などを補助する人材や拠点を供給する体制が急がれる。
スマホ講習会の実施に当たっては、参加者一人一人の疑問に個別に答えていく“一対一”の形式が最も望ましい。教える側には単にスマホの知識だけでなく、デジタル機器に不慣れな高齢者の心理に寄り添うようなサポートが求められる。
スマホという最先端のデジタル技術も、使うのは人であり、使い方は人でなければ教えられない。結局は人。その担い手をいかに増やしてくかが大きな課題だ。行政には、地域の小中学生らの力を活用することも含めて検討を進めてほしい。