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公立高の「追試」拡大
インフルエンザの受験生に配慮
今春予定は25都府県
書類選考などの救済措置も
1月から3月の受験シーズンは、インフルエンザの流行時期と重なる。中には不本意ながらインフルエンザにかかり、涙をのむ受験生もいる。こうした中、インフルエンザなどの急病にかかった生徒を救済するため、公立高校の入試で「追試」を行う自治体が近年、広がっている。これは公明党の国会議員と地方議員の連携プレーがきっかけで動き出した取り組みだ。現状を紹介する。
文科省「特段の配慮」求める通知
インフルエンザで体調を崩した生徒のために、今春の公立高校受験で、「独自の日程・学力検査」または「第二次募集と同一の日程・学力検査」で追試を実施する予定の自治体は、岩手、埼玉、香川など25都府県に上ることが分かった。文部科学省の調査に基づくもので、2016年の7府県から大幅に増えている【グラフ参照】。
また、追試以外で、何らかの形で複数回の受験機会を確保する予定の自治体は7府県。受験できなかった生徒を書類選考の対象とする予定の自治体は6道県に及ぶ。複数の対応を取っている自治体もあり、計34都道府県で救済措置が行われる見通しだ。
未実施の自治体でも、来春以降での対応を検討中の自治体は千葉、滋賀など複数あり、今後、さらに拡大する可能性がある。なお、文科省によれば、政令市の市立高校の対応も、その道府県に準じている。
私立高校の対応について文科省は把握していないが、都道府県を通じて、受験生に十分な受験機会を確保するよう求めている。
公明の国・地方議員がリード役
追試が広がるきっかけとなったのは、16年2月に神奈川県で受験生と母親が自殺した痛ましい事件だ。その受験生はインフルエンザで体調不良の中、隔離された別室で受験したが、思うように力を出せなかったのを苦にしていたとみられる。
悲劇を二度と繰り返さないよう、公明党の浮島智子衆院議員(現・文部科学副大臣)は同3月の国会質問で、実態把握や追試などの対応を要請。これを受け、文科省は同10月に、都道府県教育委員会などに急病の受験生への「特段の配慮」を求める通知を発信した。さらに、一部の地方議会で、公明党の地方議員が積極的に後押ししてきた。
その一つが埼玉県だ。県議会公明党の、ごんもり幸男県議(県議選予定候補)らが、議会質問で取り上げて推進した結果、今春から「追試」が行われることになった。
受験生から喜びの声が上がっており、同県春日部市に住む中学3年生の杉野翔太さん(仮名)は、「予防接種を受けたり、手洗いなどを心掛けているが、インフルエンザの感染は正直、心配だ。万が一、かかってしまっても追試が受けられるので安心です」と話していた。
<学力検査の追試を行う予定の都府県>
岩手、秋田、茨城、埼玉、東京、神奈川、新潟、富山、石川、福井、山梨、静岡、愛知、三重、京都、大阪、奈良、和歌山、鳥取、岡山、徳島、香川、高知、福岡、長崎。※広島は小論文・面接での追試を実施。
<複数の受験機会を確保または書類選考での救済措置を行う予定の道府県>
北海道、青森、宮城、秋田、福島、群馬、埼玉、山梨、京都、山口、愛媛、佐賀、宮崎。
社会全体で子ども育む
早稲田大学 喜多明人 教授
高校入試は、進路や人生を大きく左右する重要なイベントの一つです。インフルエンザなどは、やむを得ずかかってしまう病気で、受験の機会が奪われる子どもの不利益はとても大きい。
これまでインフルエンザの受験生への対応として多くの自治体が採用していた別室受験も、具合の悪い中でも試験を受けさせるわけで、適切な対応とは言えません。
追試などの救済措置が、自治体で拡大していることは、子どもの権利を守る意味で高く評価できます。
一方、運営側の負担が増えることから、未実施の自治体も複数あると聞きます。急病の子どもは受験生全体から見れば少数であり、それほど大きな負担にはならないはずです。
子どもは社会全体で育んでいく必要があります。「体調管理も受験のうち」といった大人目線の考え方を、子ども最優先の考え方に改めるべき時です。