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若者の連絡ツールを活用 広がる「SNS相談」
いじめ、自殺の防止へ
公明の調査・提言受け政府が推進
LINEなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した行政や民間の相談窓口が各地に広がっている。公明党が強く推進してきたもので、若者を中心に、いじめへの対応や自殺防止につなげる手段として注目を集めている。現状について解説するとともに、一般財団法人・全国SNSカウンセリング協議会の古今堂靖専務理事に話を聞いた。
住民のさまざまな悩みに対し、国や自治体、民間団体が相談窓口を設けている。
こうした窓口は対面型か電話によるものが主流だ。しかし、対面型では窓口に足を運ぶ必要があり、電話も他人に聞かれないよう周囲に注意を払わなければならない。このため、若者は敷居が高いと感じるのではないかと指摘されていた。
特に若者の自殺者が増加傾向にあり、自殺防止やいじめに関する相談体制の改善が急がれている。そこで注目されるのがSNSの活用だ。
総務省の調査によると、10代から30代の連絡手段はSNSが圧倒的に多い。特にLINEの利用率は8~9割を占める。
そこで、相談事業を展開する複数の民間団体が共同でSNSの活用に関する協議会を設立するなど検討が進められてきた。
公明党も、SNSを活用した相談体制の構築を強く訴えてきた。きっかけとなったのは、党長野県本部青年局の取り組みだ。
若者の自殺をテーマに2016年に実施したアンケート結果を基に、翌17年2月、県に対し、SNSを活用した自殺防止対策を要望。同年9月、県が中高生を対象にLINEを使ったいじめ・自殺相談を試験的に実施したところ、2週間の短期間に、16年度の電話相談数の2倍以上となる547件もの相談が寄せられた。
こうした成果を受け、党文部科学部会を中心に、全国的な取り組みとするよう政府に要請。17年度補正予算、18年度予算に、いじめ防止のための相談にSNSを活用する事業が盛り込まれた。18年度は、北海道、東京都、大阪府、兵庫県、名古屋市など19都道府県11市で実施されている。
厚生労働省も18年度から、自殺防止策としてSNSを活用した相談事業を本格的に開始。同省から委託を受けた民間団体の専門家らが相談に乗っている。
利用者からは「相談内容を周囲に聞かれず、場所を選ぶ必要もないので便利」などと好評だ。両省とも、19年度予算案にSNSの相談体制の充実に向けた費用を計上している。
育児など 自治体にも取り組み拡大
いじめや自殺防止以外にも、SNSを使った相談事業は広がりを見せている。
山形県新庄市は16年2月から、LINEを利用した子育て相談を始めている。受け付け時間は、水曜と年末年始を除く午前10時~午後6時。時間外に送られたメッセージには翌日に回答する。「離乳食に切り替える時期が分からない」など子育てに関する相談に保育士資格を持つスタッフが応じている。
札幌市では16年8月から、学校の長期休み明けなど期間限定で若い女性の相談に応じる「ガールズ相談」をLINEで実施。女性のキャリアカウンセラーや臨床心理士らが恋愛や学校、家庭、性に関する悩みなどに応対している。
東京都は昨年11月、2週間限定でLINEによる子どもや保護者からの相談を受け付けた。都内に住む子どもや保護者が対象で、相談内容によって児童相談所などの支援につなげている。
技能持った人材育成を
全国SNSカウンセリング協議会 古今堂 靖専務理事
公明党は、「命を守りたい」との思いから、SNS相談事業を形にしてくれた。政権与党として責任ある対応だ。国会議員と地方議員が連携し、真面目に真摯に向き合い、政策実現に奔走されていることにも感謝したい。
電話だと、周囲の人に聞かれないよう、誰もいない場所まで移動する必要がある。これでは気軽に相談しにくい。SNSは、声を発することもなく、スマートフォンの操作で相談可能だ。悩みを打ち明けるには便利だ。
こうしたSNS相談は、いじめや自殺防止にとどまらず、企業のメンタルヘルス(心の健康)対策や進路など就職支援にも有効だと感じている。
今後の課題は、相談内容をいかに解決へと導いていくかだ。短い文章によるやりとりから、悩みの解決につなげていくためにも、SNSを使ったカウンセリング技能の習得など相談員の育成が必要だ。協議会として4月から資格制度を立ち上げて対応していきたい。