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【主張】米中ロの核戦力 3カ国が協調し軍縮を進めよ
現在、世界全体の核弾頭の総数は約1万3000発。そのうちの9割を米国とロシアが占めるが、中国の核戦力が米ロに近づくのではないかとの懸念が高まっている。そうであるなら、米中ロの3カ国が協調して核軍縮を進めていくべきだ。
米国防総省は3日、「中国の軍事力に関する年次報告書」(2021年版)をまとめた。報告書によると、中国の核弾頭保有数は、30年までに少なくとも1000発に達すると見積もられるという。
この報告書に対して、中国は「事実を無視し、偏見に満ちている」と反発。「米国こそが世界最大の核の脅威の発生源である」と非難し、まずは米国が核兵器を大幅に削減すべきであると主張した。
ただ、中国は核戦力に関する情報を明らかにしていない。行き過ぎた核兵器開発を進めているのではないかと不信感を募らせた結果、米国は中国に対抗して核軍拡に走る恐れもある。そうなれば、ロシアも核軍拡を進めるだろう。こうした事態を避けるためにも、核戦力に関する情報公開に向けた努力が重要だ。
米国のバイデン政権は先月5日、保有する核弾頭の総数が3750発であることを公表した。トランプ前政権が公表を拒んでいたため、17年以来4年ぶりの公表である。
また、米ロは新戦略兵器削減条約(新START)の下、長距離の目標を破壊できる戦略核弾頭で、ミサイルに搭載されるなど配備済みのものについては1550発以下に抑えるよう義務付けられている。米ロは新STARTを順守しており、今年9月の時点で米国の配備済み戦略核弾頭数は1389発、ロシアは1458発である。米ロは戦略核弾頭の所在場所の現地査察などを相互に実施し、新STARTの実施状況を確認していることも重要だ。
米国防総省の報告書通り、30年に中国の核弾頭数が1000発になり、その全てを配備すれば、中国の核戦力は米ロに接近する。核軍縮は今や、中国抜きでは語れない。核兵器保有国の軍縮に向けた取り組みはこれまで、主に米ロのみで進められてきたが、今後は米中ロの3カ国が足並みをそろえて核兵器を削減していってほしい。