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2021年11月6日

知ってほしいHSC(人一倍繊細な子ども)

感覚過敏と高い共感力

「音や光、においに敏感」「気を使い過ぎて疲れやすい」など、人一倍繊細な特性を持つ子どもは「ハイリー・センシティブ・チャイルド(HSC)」と呼ばれる。5人に1人が該当するとされ、不登校の原因になっている可能性もあるという。HSCの特徴や関わり方、必要な支援について専門家に聞いた。

HSCは米国の心理学者エレイン・アーロン博士が1996年に提唱した概念だ。主に①何事も深く考えて処理する②五感が敏感で、過剰に刺激を受けやすい③共感力が高く、感情の反応が強い④ささいな刺激を察知する――という四つの特性を持つ。関西大学の串崎真志教授(臨床心理学)は「シャイな性格が不適応と見なされていた欧米で、そうした性格の創造的でポジティブな面に光を当てようとする運動の中で生まれた」と指摘する。

日本でも3年ほど前からHSCの大人版であるHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)に関する書籍の出版が相次ぎ、注目を集めるようになった。背景には、SNS(会員制交流サイト)の発達で、人間関係に気を使い過ぎて疲れたり、息苦しさを感じる人が増えていることが挙げられる。

■病気ではなく性格の一つ

あくまで、HSCは病気や障がいではなく性格の一つ。「繊細さゆえに周囲の影響を受けて疲れやすいという短所は、変化を敏感に察知し、人の気持ちへの共感力が高いといった長所の裏返しでもある」(串崎教授)。HSC、HSPを判別するためのチェックリストはあるが、精神医学的なはっきりとした基準はないという。

よく混同されるのが「発達障がい」だ。感覚過敏や細かい点へのこだわり、集団になじみにくいなどの特徴が共通しており、小学校低学年までは見分けにくい。ただ、HSCは人の気持ちへの共感力が高いという点で大きく異なる。

■マイペース尊重を

HSCへの関わり方について串崎教授は、「マイペースを尊重してあげること」を強調する。厳しいしつけは、自分の性格を嫌いになったり、自信を失わせてしまうため逆効果になるという。食べ物の好き嫌いや、服がチクチクして着られないなどの感覚過敏で生活に支障が出る場合は、各家庭で妥協点を見つけていく工夫が必要だ。

串崎教授は「HSCは優しさや人を前向きにさせる力を持つ“宝”のような性格。大きくなれば繊細さの良い面が十分発揮される。あまり他の子と比べないでほしい」と語っている。

■理解されず不登校の原因にも

学校現場ではHSCは周囲から理解されず、本人が悩みを抱えやすくなっているのが現状だ。

全国からHSCの相談を受けているNPO法人千葉こども家庭支援センターの杉本景子理事長(公認心理師)によると、「学校の先生が怒鳴るのが怖い」との相談が多いという。「自分が叱られていなくても、ピリピリした教室の雰囲気から大きな負担を感じてしまう」と話す。

思慮深さゆえに授業で手を挙げられず、先生から「積極性が足りない」と心配されることもある。本人は頭をフル回転させて授業に参加していても、表面的に活発な子が評価され、自信を失うことも多いという。本人が理不尽に感じることが蓄積すると学校に行く気力を保てなくなり、不登校につながることもある。

■学校現場での周知重要

各地で教員を対象にHSCの講演も行う杉本理事長は、学校現場へのHSCに関する情報の周知とともに、教員の質の向上や教育環境の改善が重要と説く。いまだに児童生徒が萎縮するような指導を行う学校が散見されるとした上で、「HSCは危険に真っ先に気付く“炭鉱のカナリア”のような存在。彼らが安心して過ごせる教育環境をつくることは全ての子どもたちのためになる」と力説する。

■公明、各地で訴え

HSC、HSPへの社会的関心の高まりから、公明議員が地方議会で取り上げるケースも増えてきた。

東京都文京区議会では今年6月の本会議で、宮本伸一区議がHSCへの支援について質問。区側は「校内研修などを通して、教職員のHSCに対する理解を深める」と答弁している。

同立川市議会では19年3月の文教委員会で、大沢純一市議がHSCと不登校との関係について質問。埼玉県朝霞市議会でも昨年9月の本会議で、岡崎和広市議がHSPの認知度向上や、学校教育におけるHSCへの配慮を訴えている。

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