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認知症施策 さらに前進
19年度予算案の主な項目から
社会全体で認知症の人を支えるため、2019年度の政府予算案には多くの支援策が盛り込まれた。主な関連施策を解説するとともに、公明党の取り組みや識者の声を紹介する。
■認知症サポーターの活躍促進
■初期集中チームなど活動支援
■専門機関整備し相談機能強化
■地域での見守り体制の確立へ
■有効な予防法など研究費拡充
政府は、「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)などに基づき、認知症の人を支援する具体策を展開中だ。19年度予算案に計上された厚生労働省管轄の関連費用を前年度より2割ほど増やし、取り組みを加速させる。
代表的な施策の一つは、認知症を正しく理解して本人や家族を支える「認知症サポーター」の活躍の促進だ。サポーターは05年度に厚労省が創設したボランティア制度。自治体や企業が実施する無料の養成講座を受ければ資格を得られる。既に、全国で1000万人を突破した。
この人たちの能力や意欲を一段と地域で生かすため、19年度予算案では、日常生活で困り事を抱える認知症の人と、手助けするサポーターをつなぐマッチングの仕組み「チームオレンジ(仮称)」を構築する。
また、認知症が疑われる人に対して医師ら専門家が早期に対応する「認知症初期集中支援チーム」と、認知症の人とその家族への相談業務などを行う「認知症地域支援推進員」は18年度から、ほぼ全市区町村に設置された。そこで、19年度は支援チームや推進員の具体的な活動を積極的に後押ししていく。
認知症の進行を遅らせるには、早い段階での発見や治療が効果的である。そのため、認知症の人とその家族に対する早期診断などを行うため、専門医療機関である「認知症疾患医療センター」を整備する。併せて、関係機関とも連携し、日常生活に関わる相談事業をさらに充実させる。
このほか、隣接する市区町村を中心に地域での見守り体制の確立を推進。認知症の有効な予防法や診断・治療法などの研究予算を拡充する。
認知症の人は、団塊の世代が75歳以上となる25年には730万人に増加すると見込まれている【グラフ参照】。これは、65歳以上の高齢者の約5人に1人の割合だ。
本人やその家族の生活に、さまざまな影響をもたらすが、社会的にも多分野に損失が及ぶ。慶応義塾大学などの研究グループによると、その額は年間14.5兆円に上ると試算されている。
そこで政府は、認知症施策を強化しようと、18年末に関係閣僚会議の初会合を開催。認知症になっても地域で暮らせる「共生」と、認知症の「予防」の二つの視点から施策を検討し、今年6月までに大綱を取りまとめる方針だ。
公明 基本法の制定めざす
公明党は、新オレンジプランの策定をリードするとともに、認知症サポーターの1000万人突破や認知症初期集中支援チームの設置を推進してきた。
17年8月には、党内に「認知症対策推進本部」を設置。認知症の当事者・家族や関係者、識者との意見交換、現地調査を重ね、同年12月、安倍晋三首相宛ての「総合的な認知症施策の推進に向けた提言」を提出し、「基本法の制定も視野に入れて、政府を挙げて総合的に取り組むべき」と提案した。
さらに、翌18年9月には、党独自の「認知症施策推進基本法案」の骨子案を発表。同骨子案は、認知症当事者の意思を尊重しながら、家族らに寄り添う姿勢を重視した内容である。公明党は同法案の制定をめざしている。
着実な政策効果 一層の充実を
京慈恵会医科大学 繁田雅弘教授
政府の「新オレンジプラン」に基づくさまざまな施策については、着実に効果を上げつつあると評価しています。
その上で今後は、「社会の中に認知症を、どう位置付けるか」という国のビジョンについて議論を深めてほしいです。ビジョンを明確にすることが、認知症支援策をさらに充実させる土台となるでしょう。
また、公明党が取りまとめた認知症施策推進基本法案の骨子案にもあるように、当事者の意思を尊重し、その声を施策に反映させていくことが重要です。例えば、65歳未満で発症する若年性認知症への支援には、本人が仕事の継続を望む場合、治療との両立などが焦点となるからです。
さらに、評価せずに継続処方されている治療薬の問題など、課題は多岐にわたります。生活支援や教育、消費者問題も含めた幅広い政策の検討に期待します。