ニュース
コラム「北斗七星」
「森はいのちです。そして、森づくりは、明日を植える、心に木を植えることです」(『4千万本の木を植えた男が残す言葉』、河出書房新社)。今年、鬼籍入りした世界的生態学者・宮脇昭氏。植生生態学の研究をはじめ環境保全・回復に尽力したことで知られる◆研究対象であった多層群落の森から何を学ぶか。氏によるとグローバルには温暖化の元凶とされる二酸化炭素を吸収・固定する「いのちの森づくり」。地域的には台風や地震にも耐え、生き延びてきた「ふるさとの森づくり」だという◆同じく地球の未来を見つめて植林を続け、ノーベル平和賞を受けたケニアのワンガリ・マータイ女史。今年は没後10年。アフリカの大地を緑にとグリーンベルト運動の創始者として活躍した◆2年ぶりとなる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が間もなく英国で開かれる。脱炭素化に向け各国の温室効果ガス排出削減目標の引き上げなどが議題になるが、つばぜり合いを演じる時間はない◆命がけで道を切り開いた先人と連なった人たち。その汗や苦難に思いをはせてほしい。折しも、気候モデルの礎を築いた真鍋淑郎氏にノーベル賞授賞が決まった。異常気象が人為的であるとした先駆者の業績・知見に基づく地球温暖化対策の進展を望まずにはいられない。(照)