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2021年10月12日

子ども基本法の制定必要

党女性委、特命チーム合同会議(講演要旨)

公明党女性委員会(委員長=古屋範子副代表)は9月29日、衆院第2議員会館で、党「子どもの未来創造」特命チーム(座長=竹内譲政務調査会長)と合同会議を開催。公明党が衆院選の重点政策に掲げる「子ども基本法」の制定に関して、奥山眞紀子・日本子ども虐待防止学会理事長、高橋恵里子・日本財団公益事業部長、髙橋愛子・日本ユニセフ協会広報・アドボカシー推進室マネージャーから話を聞きました。その要旨を紹介します。

奥山眞紀子・日本子ども虐待防止学会理事長

奥山眞紀子・日本子ども虐待防止学会理事長

30年以上、虐待の問題に取り組んでいる。日本は、1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」を94年に批准したが、子どもの権利を総合的に保障する法律はない。なぜなら、政府は子どもの権利侵害はないという考えであった。

その後、虐待が大きな社会問題となり、2000年に虐待防止法が制定され、04年の法改正で初めて「児童虐待が児童の人権を著しく侵害し」と人権侵害にあたることが明記。16年の改正児童福祉法で初めて「子どもは権利の主体である」と記された。やっと子どもの権利を巡り、法整備の土壌が整いつつあると思う。

19年、千葉県野田市で、当時小学4年生だった栗原心愛さんが虐待死する事件が起きた。心愛さんが父親からの暴力を訴えた学校のアンケートのコピーを、市教育委員会が父親に渡してしまったことが問題となった。学校側へのインタビューを通じて「子どもが意見を言う権利をふさいでしまったのではないか」と聞いたが、子どもの権利を知らない学校関係者が多いと感じた。一般の人はもっと知らないと思う。福祉分野に限らず、子どもの権利が守られる社会を実現する法律の制定が必要だと考える。

高橋恵里子・日本財団公益事業部長

高橋恵里子・日本財団公益事業部長

国連児童基金(ユニセフ)の子どもの幸福度に関する調査(2020年)によると、先進国など38カ国のうち、日本は身体的健康が1位なのに対し、精神的幸福度が37位で、生活満足度が下から2番目、自殺率(15~19歳)が高い方から12番目だった。社会的スキル(すぐに友だちができると答えた子どもの割合)も下から2番目。生きづらさを感じている子どもが多いことが分かる。

なぜ、国連で子どもの権利条約が採択されたのか。子どもは、その発達上の状態ゆえに人権侵害を受けやすい。子どもであるがゆえに声を上げにくく、司法にもアクセスできない。そのため、子どもの権利を保障しようと、世界196カ国が条約に批准している。

日本が子どもの権利条約に批准した際、政府は現行法で子どもの権利は守られているとの立場を取り、国内法の整備を行わなかった。そのため、日本では現在、子どもに関わる個別法は存在するが、あらゆる場面で子どもの権利を包括的に定めた「子ども基本法」が存在しない。そこで、憲法や子どもの権利条約と、子どもの権利に関わる法律とをつなぐ基盤となる「子ども基本法」の制定が不可欠だ。

髙橋愛子・日本ユニセフ協会・広報・アドボカシー推進室マネージャー

髙橋愛子・日本ユニセフ協会・広報・アドボカシー推進室マネージャー

「子どもコミッショナー(権利擁護機関)」は、行政から独立した立場で、子ども政策を調査し、勧告する機関だ。子どもの権利条約の採択以降、こうした機関の設置が進んでいる。2012年には世界の70カ国以上で設置。既に欧州では47カ国中34カ国が導入済みだ。その多くが、設置法で子どもの権利条約に言及している。

子どもコミッショナーは海外で、さまざまな成果を出している。例えば、体罰を容認する条文の廃止や性犯罪の処罰強化など。また、普通学級における障がい児教育を取り上げ、調査して制度改正に結び付けたり、コロナ禍の子どもの状況について調査、提言した事例もある。フィンランドでは、子どもの権利条約と国内法の整合性の調査も実施した。

一方、子どもコミッショナーが効果的に活動するには、独立性、子どもの参加、アクセスのしやすさが重要だ。特に、子どもの参加はそれ自体が権利だ。また他の権利実現のための手段でもある。具体的には、①参加の場がある②言いやすい形で意見を言える③意見を聞く大人がいる④影響を与えることができる――の四つが必要。形態は、子どもの参加度合いによってさまざまだ。

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