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【主張】高齢運転者の事故 悲劇防ぐ多角的な対策急ぎたい
東京・池袋で母子2人が死亡した自動車暴走事故の裁判で、東京地裁は「ブレーキと間違えてアクセルを踏み続けて進行した過失」と認定し、運転していた当時87歳の被告に実刑判決を言い渡した。
被告は判決を受け入れ、控訴しない意向だというが、妻子を失った遺族の悲しみは察するに余りある。悲惨な事故を繰り返してはならず、多角的に対策を急ぐべきだ。
この事故を契機に、高齢ドライバーの安全対策の必要性について、社会的な関心が高まった。
国会では対策強化に向け、公明党が推進した改正道路交通法が昨年6月に成立した。来年6月までに施行され、75歳以上で一定の違反歴のあるドライバーに実技試験の運転技能検査が義務付けられる。
また運転できる車を、自動ブレーキなどの先進安全機能を搭載した「安全運転サポート車(サポカー)」に限定する免許も導入する。生活の足としてマイカーが欠かせないなどの理由で、運転免許証の自主返納をためらう高齢ドライバーらの新たな選択肢となろう。
サポカーについては、一層の機能強化が必要だ。
2018年末に約564万人だった75歳以上の運転免許保有者は、23年末に約717万人に達し、その後も増加が見込まれている。こうした中で、より精度の高い安全機能を備える車が開発されれば、免許を手放さずに済む人が増える。
既に自動車メーカー各社は安全機能の向上に取り組んでおり、将来的には完全自動運転の実現も見据えている。国はこうした取り組みを後押しするとともに、サポカーの購入費補助の充実などによる普及促進に注力してほしい。
一方、運転免許を返納した場合に、その後の生活を支える手だてにも目配りする必要がある。具体的には交通手段の確保だ。
この点については、地方ほど経営が厳しい鉄道やバスなどの公共交通機関を支える法整備が昨年の通常国会で実現した。自治体が地域公共交通計画を策定し、国が予算面などで支援する。
自治体と交通事業者が協力し、地域の実情に応じた取り組みを進めてほしい。