ニュース
当選無効、起訴・勾留の国会議員 歳費返納、支給停止へ
国民の疑問に応える
法改正骨子の公明案示し議論リード
西田実仁・与党プロジェクトチーム共同座長に聞く
公職選挙法違反の罪で当選無効となった国会議員の歳費返納を義務付ける法改正に向け、自民、公明両党の与党歳費法に関する検討プロジェクトチーム(PT)が骨子案をまとめました。与党合意の意義や公明党が果たした役割について、PT共同座長を務める公明党の西田実仁選挙対策委員長に聞きました。
――合意した骨子案の内容は。
西田 まず当選無効となった国会議員に対して、歳費と文書通信交通滞在費の4割、期末手当の全額を返納することを義務化しました。
一方、起訴・勾留された国会議員に対して、歳費は全額に近い水準、期末手当と文書通信交通滞在費は全額を支給停止に。歳費を支給停止する割合などについては、勾留された国会議員が全く議員活動できないとは言い切れない実情も踏まえ、野党とも真摯に協議をしていきたいと考えています。
――歳費返納を巡る議論を始めたきっかけは何ですか。
西田 2019年参院選を巡る買収事件で有罪が確定し、当選無効となった国会議員が今年2月の議員辞職まで、歳費など約4900万円を受け取っていた事実に対し、「当選が無効になった議員の歳費が全額支払われているのはおかしい」との率直な国民の疑問・感情に応えたいという思いが出発点です。
そもそも、当選無効という選挙結果を覆すこととなる重大な結果を引き起こしたわけですから、その歳費について、返納を義務付ける必要があるのではないかとの問題意識から、今年5月に党内議論を開始しました。
――党内議論の結果、どうなりましたか。
西田 歳費返納に向けた公明案を取りまとめました。その後、自民党や野党各党に説明に回った後、自民党・公明党の幹事長、国会対策委員長会談において、与党PTを設置することが決定。6月に初会合を開きました。
ここで公明案をベースとして真摯に議論を積み重ねた結果、8月26日に歳費法改正に向けた骨子案で合意することができました。同時に、今後は野党にも協議を呼び掛けていく方針を確認しました。
独自に案を作り、与党での議論を終始リードしてきたのは、紛れもなく公明党です。
国民の率直な感情を反映しながら、一方で憲法違反にならないよう歳費法改正の骨子案を与党で作り上げた意義は大きいと言えます。
合意形成へ野党とも協議
――議論で課題に上がった点は。
西田 まず現行法では、国が歳費を返還請求できる規定がなく、自主返納も公選法が禁じる寄付行為に該当してしまいかねません。これらの課題をクリアし、歳費返納を可能にするには、新たな法整備が必要だと確認しました。
特に大きな課題は、憲法との整合性です。歳費について、憲法49条では「両議院の議員は、国庫から相当額の歳費を受ける」と、国民の代表たる国会議員の歳費受給権が定められていることを考慮しなくてはなりません。
他方、当選無効となった場合、それまでの議員活動全ての効力を無効とすれば、国会での採決もやり直しとなり、法的安定性を害することになりかねません。こうした実情を踏まえ、当選無効でも、そうなるまでの間の議員活動は有効とせざるを得ないと考えています。
――歳費全額の返納は難しいということですか。
西田 当選無効となり得る選挙犯罪には、その内容や軽重にさまざまなものもありますので、歳費全額ではなく、相当額と規定することが適切と考えました。そして、5月には党として、歳費の4割を返納する案を取りまとめ、自民党に提示しました。4割としたのは、国家公務員の懲戒処分で規定されている減給2割に、国会議員の責任の重さを加味したからです。
憲法学者からも、歳費返納の割合は「4割返還くらいが合憲の限度ではないか」(6月29日付「朝日」で長谷部恭男・早稲田大学教授)との見解が示されています。
この法改正は、政治への信頼回復に向けた、けじめの一つになります。次期国会での法案提出をめざして野党との協議でも合意形成に尽力し、必ず法改正を実現する決意です。