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【主張】デジタル庁発足へ 利便性が実感できる改革を
デジタル庁が9月1日に発足する。誰もがデジタル化の恩恵を最大限に受けることができる社会を実現するための司令塔である。
デジタル庁は内閣直属で首相がトップを兼ね、その下に担当相を置き、事務方トップには民間から起用する予定の「デジタル監」を配置する。他省庁に業務見直しなどを勧告する権限を持ち、強い総合調整機能を担う。
デジタル化に関して日本は、2000年にIT基本法を制定したものの遅々とした歩みを続け、他の先進国に後れを取ってきた。「デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げる」との目標を何としても達成しなければならない。
成否のカギを握るのが、最新の知見を持った高度な専門人材の確保と育成である。職員約500人のうち100~200人程度を民間から採用する予定で、給料面で優遇するほか、テレワークに加え、非常勤職員に所属企業との兼業も認める。
これまでに行われた公募では、募集人数を大幅に上回る応募があったという。政府は、民間人材の強い意欲に応え、その高いスキルを存分に発揮できる体制づくりに努めてもらいたい。
その上で重要なのは、デジタル化の利便性を国民が実感できることだ。政府は、スマートフォン(スマホ)を使って「全ての行政手続きを60秒以内に完結できるようにする」との将来像を示している。また、各種給付金の迅速な支給や行政コストの削減などにもつながる。
急ぐべきはマイナンバーカードの普及だ。カードの活用によって行政手続きが簡素化され、住民票などのコンビニ発行も可能になる。今後は、引っ越し時の転出・転入手続きなどをオンラインでできるようにし、利便性も高める。
政府は来年度までに、ほぼ全ての国民にカードが行き渡ることをめざしている。現在の普及率は約37%であり、デジタル庁は普及加速に全力で取り組む必要がある。
デジタル化の推進は、人口減少・少子高齢化が進む日本の成長にとって欠かせない取り組みだ。政府はデジタル庁の使命の重さを肝に銘じ、改革を進めてもらいたい。