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2021年8月24日

自律型致死兵器システム(LAWS)規制議論の現状

既存のAI兵器を問題視 
議長文書で「禁止」にも言及 
国際会議を開催

人工知能(AI)などの新興技術を組み込んだ機械が自らの判断で標的を選択し、攻撃する「自律型致死兵器システム」(LAWS)。その規制に向けた議論を進めている特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の政府専門家会合(GGE)が、今月3日から13日まで、スイスのジュネーブで開催された。GGEでどのような議論が行われたのか解説する。

LAWSとは何かを明らかにする国際的に合意された定義はない。

差し当たり、現時点では、敵の動きを把握するなどの目的で行われる「情報収集・警戒監視・偵察」の任務から、敵を発見して狙いを定め、攻撃するまでの一連の行動を、人間が一切関与することなく、機械が自らの判断で実行し得る「完全自律型」の兵器であると理解されている。

そのような兵器はまだ存在しないが、LAWSが実行可能であるとされる任務を部分的に行える、AIを搭載した自律型兵器は既にあり、使用もされている。特に、敵の戦闘機やミサイルなどの接近を感知する防空レーダーの破壊など、人の殺傷を目的としない任務に、そうした兵器が頻繁に使われている。

こうした現状を踏まえ、今回のGGEでは、現存していないLAWSだけでなく、既存の「自律型兵器システム」(AWS)にも目を向けた規制に関する議論を進めたことが注目されている。CCWの締約国である日本に加え、AWSの製造と使用が盛んな米国、ロシア、中国、イスラエル、インド、トルコ、韓国など55カ国が参加した。

2019年8月のGGEでLAWSの規制に関する「規範と運用の枠組み」のあり方を検討することで合意しており、今回のGGEでは、そのための論点を整理した文書を、ベルギー国連大使のマルク・ペクステアン議長が提出。同文書の「可能な限り配慮する事項」には、LAWSとAWSの禁止に踏み込む文言が含まれた。

AWSについては、過度の傷害や不必要な苦痛を与える兵器の使用禁止のほか、戦闘員と民間人を区別しない無差別攻撃も禁じる「国際人道法の順守」と「人間の管理の確保」の二つの観点に基づき、禁止に関して言及している。

この点について、日本は、この二つの観点からAWSの問題を考えることを評価しつつ、さらに議論を深める必要があるとの見解を示した。米国やロシア、イスラエル、オーストラリアなどは、AWSの禁止に関わる文言に懸念を示し、この文言の削除、もしくは修正が必要だとしている。

議長文書より抜粋

●完全自律型の兵器システムを開発、製造、取得、配備、使用しない
●国際人道法に反する、あらゆる種類のAWSを使用しない
●人間の操作員が一切関与しない、あらゆる種類のAWSを使用しない

“神風ドローン”に懸念高まる
国連が「初の使用疑惑」を報告

AWSの中でも「遊弋弾」の使用が問題視されている。航空機の形をしたミサイルで、有人戦闘機に先行して徘徊するように飛びながら、防空レーダーを捜索、発見したら突撃して破壊し、有人戦闘機が安全に作戦を実行できるようにするというものだ。“神風ドローン”と呼ばれることも多い。イスラエル製の「ハーピー」と、その改良型の「ハロップ」が有名だ。

遊弋弾は、人が遠隔操作で運用することもできるが、AIを搭載しており、防空レーダーの発見から攻撃まで、機体自らの判断で行う自律飛行も可能である。

懸念されているのは、人を殺傷する目的で遊弋弾が使用されることである。

今年3月、北アフリカのリビアの内戦で、トルコ製の遊弋弾である「カルグ」が、人の殺傷を含む目的で、自律飛行で使用されていたと指摘する国連の報告書が提出された。

同報告書は、シリアの内戦におけるカルグの使用について、「LAWSの初の使用が疑われる例」としていたため、各国を驚かせた。ただ、どのような被害があったのかは不明だ。

公明 他党に先駆け政府に提言

公明党は、他党に先駆けて、「LAWS開発規制に関する検討PT」を19年2月に設置し、有識者やLAWSに反対する国際NGOのメンバーらと意見を交換し、議論を重ねてきた。

同年3月に、GGEで日本が「全ての兵器を責任ある人間の指揮、統制の下に置く」ことなどを求め、議論をリードするよう政府に提言している。公明党の提言を受け、政府はGGEで「人間の管理の確保」などの重視を強調している。

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