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【主張】タリバン復権 制裁の手緩めず、動向注視を
2001年9月11日の米国同時多発テロを起こした国際テロ組織アルカイダの要員をかくまっていたという理由で、当時、アフガニスタンで政権の座に就いていたイスラム原理主義組織のタリバンは、米軍主導の多国籍軍による攻撃を受け、失脚した。
それから20年ほどが過ぎた今、首都カブールをはじめアフガンのほぼ全域の制圧に成功したタリバンは、再び表舞台に躍り出た。アフガン政府のガニ大統領はアラブ首長国連邦(UAE)に避難し、今後、アフガン新政権の樹立をタリバンが主導すると見込まれる。国際社会はその動向を注視する必要がある。
ただ、アフガン情勢は極めて不透明だ。
唯一、タリバンに制圧されていないアフガン北東部のパンジシール州に逃れたアムルラ・サーレ第1副大統領は、政権の崩壊を認めず、「暫定大統領に就任した」と宣言。同州で武装蜂起の準備をしているとも報じられている。
現在、最優先ですべきことは、アフガンにいる外国人や、国外への退避を望むアフガン国民の支援であろう。在アフガン日本大使館の職員12人は全員、既にUAEに退避した。まだ邦人が少数、アフガン国内に残っており、引き続き、邦人の安全確保と退避に向け、日本政府は全力を挙げて取り組んでもらいたい。
タリバンの幹部は、住民の財産と身の安全を守ると述べているが、タリバンに反発してデモを起こした住民に発砲したほか略奪も横行し、末端の要員まで統率が取れていない。また、イスラム教の極端な解釈を維持する姿勢も見せており、女性が教育も受けられず、就労もできない状況になることも危惧される。
アフガン国内には、アルカイダなどのテロ組織の要員が身を潜めており、タリバンがこれらの勢力と決別しなければ、アフガンが再びテロの温床になるとの懸念もある。
忘れてはならないのは、タリバンは依然、国連安全保障理事会決議に基づく制裁の対象であり、幹部らの資産凍結などが行われているという点である。タリバンが国際社会の信頼を勝ち取るための具体的な取り組みを実行しない限り、各国は厳しい制裁を継続すべきだ。