ニュース
【主張】最低賃金引き上げ 中小企業の負担軽減策、周知を
2021年度の地域別最低賃金(時給)が出そろい、全都道府県で初めて時給が800円を超えた。全国平均は930円になり、前年度と比べた上げ幅は過去最大の28円となった。
最低賃金の引き上げは、コロナ禍の打撃が深刻なサービス業をはじめ働き手を支える意義がある。また、個人消費の活発化を促し、コロナ後の経済回復につなげるためにも欠かせない。
一方、企業にとっては人件費の負担が増加する。とりわけ体力の弱い中小企業に与える影響は大きい。最低賃金の引き上げが雇用の維持を困難にするような事態は避けねばならない。
このため公明党は先月、最低賃金の引き上げに取り組む中小企業の負担を軽減するよう政府に緊急提言を行った。このうち「事業再構築補助金」の拡充が実現したことに注目したい。
同補助金は20年度第3次補正予算に盛り込まれたもので、新規開拓や業態転換に思い切って挑む中小企業に対し、6000万円を上限に設備投資にかかった費用の3分の2を補助する。
今回の拡充の柱は、7月30日に受け付けが始まった第3回公募分から「最低賃金枠」を新たに設けたことだ。従業員の1割以上を最低賃金プラス30円以内で雇用する中小企業を対象にしたもので、補助率も4分の3に引き上げられた。
同時に補助額の上限についても、従業員数が51人以上の中小企業は8000万円に引き上げられ、申請要件も緩和された。
これまでの申請要件は、20年10月以降の任意の3カ月の売り上げ合計が、19年1月から20年3月の同じ3カ月と比べて、10%以上減少していることなどだったが、今回、20年4月以降に対象期間が拡大された。
さらに売り上げ減だけではなく、利益が減少した場合でも一定の条件で申請が可能となった。より多くの企業が申請できるようになったことは重要だ。
最低賃金の引き上げは10月以降に適用される。政府は、最賃枠の新設や申請要件の緩和について、丁寧な説明と周知に努めてもらいたい。