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【主張】東京圏一極集中 地方の人口増へ知恵絞りたい
東京圏に人口が集中する流れを変えねばならない。
総務省が公表した住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、今年1月1日現在の日本人の総人口は1億2384万2701人で、前年を42万8617人下回った。2009年をピークに12年連続の減少である。
ところが、埼玉、東京、千葉、神奈川の4都県からなる東京圏では転入超過が続いている。コロナ禍の影響からか、東京都の人口増加率は前年より鈍化しているものの、日本の全人口の3割が東京圏に集中する構図に依然変わりはない。
しかし、人口が一部地域に集中する弊害は大きい。
新型コロナウイルスは人口密度が高い都市部で猛威を振るっている。首都直下地震や豪雨などによる大規模災害が起きれば、被災住民は桁違いに多くなり、企業活動の停止で日本経済は甚大な打撃を受ける。
また、日本が将来にわたり成長力を維持・向上させていくには、地方の発展が欠かせない。加速する地方の人口減少に歯止めをかけるため、東京圏から地方へ人の流れをつくることに知恵を絞る必要がある。
この点で、コロナ禍を大きな転機と捉えたい。テレワークが推奨されたことで、通勤圏に住むという考え方が見直され、地方に目が向いているからだ。
既に企業のサテライトオフィスの誘致や、観光先で仕事をする「ワーケーション」をアピールする自治体が増えている。企業側にも、本社機能を地方に移転する動きがある。政府は、こうした取り組みを交付金や税制措置などで後押ししており、地方の人口増につなげたい。
また、東京圏に流入する人口の大半は、進学や就職などで故郷を離れた20歳前後の若者だ。地域で教育・就労環境の整備に力を入れ、若者の定着を促す必要がある。その意味で、2018年に交付金が創設された、地元の大学と企業が連携して人材を育成・確保する取り組みは重要だ。
このほか、仕事と育児を両立しやすい環境づくりや医療提供体制の整備など、地域の実情に沿った多様な施策を進めていくべきである。