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戦争体験 後世へ語り継ぐ
市民の証言映像43件
東京・三鷹市
市の担当者から平和事業について話を聞く市議会公明党のメンバー(左側4人)
後世へ戦争の悲惨さと平和の尊さを語り継ぐため、東京都三鷹市は、毎年8月を「平和強調月間」と位置付け、太平洋戦争に関連した展示やイベントに力を入れている。また、市のホームページ特設サイトには「みたかデジタル平和資料館」が開設されており、防空頭巾や出征旗の写真などのほか、市民の戦争体験談を証言映像の形式で紹介している。市は、高齢の戦争体験者が語りかける、その映像を貴重なアーカイブ(保存記録)として収録し続け、2015年度の開設当初に9件だった体験談は現在、43件まで拡大している。
デジタル平和資料館で紹介
「怖さがまず第一。本当に怖い思いをした」。戦争体験談の証言映像でこのように語るのは、幼少期に三鷹市で太平洋戦争の戦火をくぐり抜けた深間内裕さん。3歳から三鷹市で暮らし、小学5年生の8月に終戦を迎えた。
三鷹市を含む武蔵野地域は当時、「一大軍需工業地帯」で、同市には戦争に関連する軍需工場や研究施設が集積。隣接する武蔵野市の中島飛行機武蔵製作所や、三鷹市の研究所を狙って米軍の爆撃機が襲った。度重なる空襲により、多くの尊い命が犠牲になった。
深間内さんが小学4年生の頃から終戦にかけて、爆撃は激しさを増した。自宅の2階から目撃した、中島飛行機武蔵製作所に爆弾が落ちる様子を「建物に向けて、正確に落としていた。爆撃というのは本当に恐ろしい」と語る。
当時の様子を振り返った深間内さんは、最後に「これから戦争を体験しなかった人たちが中心になってくる。戦争のない世界を期待している」と締めくくった。
今年で戦後76年。実際に戦争を経験した人は年々少なくなっており、戦争体験者の「記憶」の継承が喫緊の課題になっている。これに対し、三鷹市は「みたかデジタル平和資料館」を立ち上げ、戦争体験談のアーカイブ化に着手。「戦争を体験した人がどんどん高齢になってきている現状がある。証言を残すアーカイブ化事業がこれからも必要になってくる」(市企画経営課)とし、今後も収録に力を入れていく。
市議会公明党(寺井均幹事長)は、市の平和事業を一貫して推進してきた。粕谷稔議員が2012年9月定例会で「戦争体験の記録や映像を貴重な遺産として後世に残し、今後の三鷹市の平和事業に積極的に役立てるべきだ」と主張するなど、「みたかデジタル平和資料館」の開設に尽力した。