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コロナ禍 ひきこもり支援の現場は
訪問相談、家族会…相次ぎ中止
新型コロナウイルス感染拡大の影響で深刻化する社会的孤立。コロナ禍がひきこもりの増加に拍車を掛けることも懸念されている。ひきこもり当事者や家族、支援の現場に及ぼした影響を探るとともに、公明党の取り組みを紹介する。
新型コロナ対策で最初の緊急事態宣言が発令された昨年4月。ひきこもり当事者や家族を対象にした東京都の相談事業「ひきこもりサポートネット」では、相談件数が一時的に減少した。
その後、相談件数が戻るにつれ、一つの変化が起きた。「一斉休校をきっかけに登校できなくなった」「在宅勤務を続けていたが、会社に行けなくなった」――など、相談内容にコロナ禍の影響が現れてきたという。2020年度の訪問相談は、19年度比で半分近くにとどまった。担当者は「同居親が高齢の場合、コロナ感染を心配してキャンセルとなることがある」と語る。
当事者家族を支援する家族会も大きな影響を受けた。KHJ全国ひきこもり家族会連合会によると、昨年4~5月に緊急事態宣言が全国に広がると、各地の家族会のほとんどで定例会やイベントが中止になった。社会全体でステイホームが呼び掛けられる中、当事者や家族への影響は大きく二つに分かれた。上田理香事務局長は「関係性が良好な家庭では、一緒に過ごす時間が増えることで関係改善につながった一方、もともと関係が悪い家庭では緊張が高まりストレスを生んだ」と指摘する。
経済悪化で当事者増も懸念
「就職氷河期やリーマン・ショック後の就職が困難だった世代に、ひきこもり層が多くいる。今後、“コロナショック”によるコロナ氷河期世代が出てきてもおかしくない」。青少年自立援助センターの河野久忠理事長は、経済状況の悪化による、ひきこもりの増加を懸念する。各地で運営する地域若者サポートステーションでは、コロナの影響で離職した人が多く訪れるようになってきた。「水面下では、ひきこもり化する人が増えているのではないか」と表情を曇らせる。
社会とつながる動き模索
民間ではオンラインを活用して、ひきこもりの社会参加を後押しする取り組みが模索されている。株式会社メタアンカーの山田邦生代表取締役は、ひきこもり当事者であった友人の釼持智昭さんを雇用したことをきっかけに、当事者が社会とつながるサービス「COMOLY(コモリー)」を昨年1月に立ち上げた。
在宅ワークが可能なチラシ制作、データ入力などの仕事を提供するほか、仕事に必要な技術のトレーニングなども行う。現在、登録者は全国で260人に上り、東京都世田谷区社会福祉協議会から「ぷらっとホーム世田谷」のホームページ制作を受託するなど、実績も増えてきた。
山田代表取締役は「ひきこもりの人が一般就労にたどり着くには、外に出る、支援機関につながる、就労訓練を受ける……と、幾つものハードルを越えなければならない。オンラインでも社会とつながる仕組みをつくりたい」と意気込む。元当事者の釼持さんは「ひきこもっている人も、実は社会と関わりたいと悩んでいる。その願いを後押ししたい」と話している。
厚労省、相談窓口の明確化など通知
行政も多様な支援機関との連携を加速させている。
厚生労働省は昨年10月、ひきこもり支援について、①相談窓口の明確化と周知②対象者の実態やニーズの把握③市町村プラットフォームの設置・運営――の3点を推進するよう、全国の自治体に通知した。今年6月からは厚労省を中心に内閣府、文部科学省、経済産業省など関係府省庁の局長級が参加する横断会議がスタートした。
厚労省地域福祉課の担当者は「今年の秋から冬ごろまでに、ひきこもり支援に関する特設サイトも開設し、当事者や家族など必要な人に情報が届くようにしたい」と語っている。
公明、孤立対策の強化提言
公明党は、家族会などからの切実な要望を受け、ひきこもり支援を充実させてきた。全国の都道府県・政令指定都市に、専門相談機関「ひきこもり地域支援センター」の設置を推進。中高年のひきこもり実態調査を提言し、全国に約115万人の当事者がいる実態も明らかになった。
党社会的孤立防止対策本部(本部長=山本香苗参院議員)は今春、有識者や支援団体などから1000件以上の聞き取り調査を実施。それを踏まえ、5月に菅義偉首相と坂本哲志孤独・孤立担当相に、ひきこもりを含めた支援の抜本的拡充を提言した。
提言では、80代の親が50代のひきこもりの子を支える「8050問題」など複合的な課題に対応する「重層的支援体制整備事業」の全国展開をはじめ、ひきこもりへの理解促進やオンライン相談支援の推進、当事者活動や家族支援の強化などを明記。次期衆院選に向けた政策パンフレットでも、ひきこもり支援の拡充を掲げている。