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2021年8月6日

奨学金 企業の「肩代わり」進む

学生機構へ直接返済 
法人税軽減 社員の税負担も抑制

社員が学生時代に借りた奨学金について、勤務先企業による“肩代わり”を後押しするための新制度が今年度から導入された。奨学金を貸与する日本学生支援機構に対し、企業が直接返済できる「代理返還」制度だ。公明党は、政策パンフレットに「奨学金返還支援」の拡充を掲げ、新制度の活用を推進している。

日本学生支援機構の貸与型奨学金は、学生の約4割に当たる127万人に利用されている(2019年度)。大学生の1人当たりの平均貸与額は無利子で245万円、有利子で344万円に上り、卒業後に返済する社会人は453万人を超す。しかし、失業や収入減による経済的な事情から返済に苦労したり、延滞する若者は少なくない。

4月から新制度

こうした中、優秀な人材の確保や福利厚生を目的として、企業がそれぞれ独自に社内規定を設け、奨学金を借りた社員に代わって一部または全額を返済支援するケースがある。4月から導入された代理返還制度は、この企業による返済支援を後押しするものだ。

以前は、企業が奨学金返済を支援する場合、社員の給与や賞与に返済分を上乗せし、受け取った社員本人が同機構に支払う仕組みに限られていた。しかし、この手法では、上乗せ分が社員の所得の増加分とみなされ、所得税や住民税、社会保険料が大きくなる恐れがあった。

新制度は、企業が登録手続きをすれば直接、返済分を同機構に送金できるようにした。この仕組みならば、返済分の所得税や住民税、社会保険料は原則かからず、負担を抑えることができる。

企業側の利点も大きい。支援分の金額は損金算入ができるため、法人税の軽減につながる。制度を利用した企業は、同機構のホームページに希望すれば掲載され、求人の宣伝にも活用できる。

利用は119社

利用企業は8月1日時点で119社に上り、中小企業も多い。「企業PRになるため、制度の利用を継続したい」(同機構広報課)との声も早速、寄せられている。文部科学省学生・留学生課は「制度が始まったばかりで、まだ知らない企業も多い。潜在的なニーズ(需要)は大きく、社員・企業の双方に利点があることを周知していきたい」と説明する。

奨学金の返済支援を含む政策提言を菅首相(中央右)に手渡す党青年委員会のメンバーら=6月23日 首相官邸

党青年委 支援策の拡充促す

公明党青年委員会(委員長=矢倉克夫参院議員)は、政策懇談会「ユーストークミーティング」や政策アンケート「ボイス・アクション」を通し、多くの若者の「奨学金の返済負担を軽くしてほしい」との訴えを受け止め、支援策の拡充を推進してきた。

今年1月の参院予算委員会では三浦信祐・青年局長が、企業の返済支援の後押しを政府に要請。菅義偉首相から、代理返還制度に関し「こうした取り組みを広げたい」との答弁を引き出した。3月の同予算委でも杉久武・青年委副委員長が、制度の周知徹底を訴えている。

UIターンした若者の定住や就職を促し地方創生につなげるため、政府は奨学金返済支援に取り組む自治体を特別交付税措置で財政援助している。これに企業独自の返済支援も加われば、都市部で働く若者も恩恵を受けやすくなると期待される。三浦青年局長は「都市部の人手不足業種への返済支援も含め、公明党のネットワークの力を生かしながら、全国展開をめざして総力を挙げる」と強調する。

中小の人材確保を後押し
東京都、検討表明

人材確保に有益な手段となる奨学金の返済支援について、東京都は独自の検討を始めている。

4月末、都議会公明党(東村邦浩幹事長)は小池百合子知事に人手不足に悩む中小企業に就職した人向けに「奨学金の返済の負担を軽減する支援策」を要請。6月の都議会代表質問でも重ねて支援策を求めたところ、小池知事が、中小企業と若者の双方に「効果的な方策を検討する」と表明した。

介護分野で先行事業

都では既に、人材難とされる介護分野で先行した事業を実施している。18年度から始めた「介護職員奨学金返済・育成支援事業」だ。介護職員として就職した人向けに返済支援する介護事業者へ最大5年間、月5万円を上限に助成する。育成計画に基づいた介護福祉士試験の受験を含むキャリア形成が条件となる。

20年度は207事業所、314人の返済支援に充てられた。利用した介護事業者からは「福祉系以外の大学生からも良い反応があり、複数名の採用につながった」「返済支援した職員が転職を思いとどまってくれた」と好評だ。

都で検討が進む支援策に期待が集まっている。

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