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検証 少子社会トータルプラン
古屋範子副代表に聞く
公明党は2006年4月に「少子社会トータルプラン」を発表し、人口減少・少子高齢社会を見据えた具体策を提言、実現してきた。同プランの策定に深く関わった古屋範子副代表へのインタビューを通して、公明党の取り組みを振り返る。
人口減少の現実に危機感
政策提言へ侃々諤々の議論
――少子社会トータルプランを策定することになった経緯は。
古屋範子副代表 プラン策定の前年である2005年は、人口減少に対する問題意識が高まった年でした。この年の国勢調査で、日本の人口が減少局面に入りつつあるとの見方が示されたためです。
05年の合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に生むことができる子どもの数の平均)も1.25で、04年と比べ0.04ポイント減りました。国勢調査が始まった1920年以来、第2次世界大戦の影響を除けば、一貫して増え続けていた日本の人口が、初めて減少に転じたのです。
晩婚化・非婚化に伴い、単身世帯が増え、少子高齢化が急速に進んでいるという現実を直視し、国のあり方を根源的に考え直す必要がありました。
少子高齢化の進展は、労働力人口の減少につながり、経済に大きな影響をもたらします。また、社会保障給付費の大半を捻出する現役世代の負担も過重になり、社会保障制度が不安定化します。
こうした強い危機感を背景に、公明党は、他党に先駆けて総合的な政策提言を策定し、少子高齢社会の問題に本格的に取り組もうと決めました。その取りまとめを進めるべく、2005年1月20日に少子社会総合対策本部を設置しました。当時、党副代表だった坂口力元厚生労働相が本部長となり、私が事務局長を務めました。
――議論はどう進められたのですか。
古屋 私自身は、少子化関連の本をたくさん買い込んで片っ端から読みました。また、対策本部としては、少子高齢社会の問題に詳しい有識者や、経済界、労働界の代表を招いてヒアリングを実施しました。さらに対策本部のメンバーによる議論も精力的に行いました。坂口さんが中心となって侃々諤々の議論を重ねました。
普段は地元に帰る金曜日の夜も議論や翌週の会議の準備に充てました。
トータルプランの策定を進めていた当時は「男性は仕事、女性は家庭」といった古くからある考え方も依然、社会全体に根強く残っており、そうした価値観を見直すことから始めました。
公明党はネットワーク政党でもあるので、国会議員に加え、全国の地方議員からも意見を集めました。中には、中学生や高校生から直接聞いた意見を届けてくれた議員もいました。
子育てについて子どもたちは、「お金がかかりそう」「自分の自由な時間が持てなくなりそう」などと率直に述べており、苦労の多い、大変なものであると感じていることを知りました。
苦労はつきものだとしても、それ以上に子育ては喜びにあふれ、楽しいものだと実感できる社会に変えていかなければと痛感したことを、今も思い出します。
妊娠・出産支援、働き方改革、
教育費の負担軽減など実現
――06年4月、チャイルドファースト(子ども優先)社会の構築をめざす「少子社会トータルプラン」がまとまりました。
古屋 トータルプランは「働き方改革」と、若者の就労から妊娠・出産、仕事と育児の両立など、子どもが成長するまでの幅広い期間における「切れ目のない総合的な子育て支援」の二つを柱としています。
家庭を持つ、持たない、子どもを持つ、持たないというのは個人の意思であり、それは尊重されるべきです。一方、自身の労働環境や子育てにかかる費用を心配して、家庭や子どもを持ちたいと思っているにもかかわらず、諦めてしまっている人も少なくありません。
子どもを持ちたいと希望する若者に対して、惜しみない支援を行う。そして、「子どもの幸せ」や「子育ての安心」が確保される社会こそ、全ての国民に優しい社会であるとの考え方に立ち、子育てを社会の中心軸に位置付け、社会全体で後押ししていくという理念が、トータルプランに込められています。
――トータルプランで掲げた施策が着実に実現してきました。
古屋 例えば、公明党が一貫して取り組んでいる出産育児一時金の拡充です。プラン発表当時は30万円でしたが、現在の42万円まで随時拡充されてきました。
不妊治療の負担軽減もトータルプランで触れています。これまで助成制度が拡充され、いよいよ22年から保険適用が実現します。
女性が多い非正規雇用の拡大に伴って、格差の是正ということもトータルプランの中で掲げ、「同一労働同一賃金」を導入する法律が成立し、20年の4月から実施となりました。
また、長時間労働の是正では、時間外労働の罰則付き上限規制の創設や、終業から始業まで一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」の努力義務化などを法制化しました。
プランで掲げた教育費の負担軽減については、奨学金が拡充され、給付型の奨学金も創設されました。幼児教育・保育の無償化も進んでいます。
プラン発表前年に緊急提言
少子化対策担当相の創設も
――トータルプラン発表の1年前に対策本部が政府に提出した緊急提言の中にも実現した政策があるそうですね。
古屋 提言は、早期に実現をめざす課題をまとめたものです。
このうち、次世代育成支援特命大臣の設置については、07年8月に少子化対策担当の内閣府特命担当大臣が創設されるという形で実現しました。
また、当時は小学校修了までだった児童手当の支給対象年齢の中学3年までの引き上げも求めており、これも実現しています。
さらに、男性の育児休業の取得を促すため、ノルウェーが初めて導入し、北欧を中心に各国に普及した「パパ・クォータ制」の導入も提案しています。これは、父親だけに割り当てられる育児休暇期間を設けるというものです。
この理念を具現化したパパ・ママ育休プラスという制度が10年から始まり、母親だけでなく父親も育児休暇を取得した場合、それまで1年間だった育児休業期間が2カ月延長されるようになりました。
公明党は現在、新たに「子育て応援トータルプラン」の策定に取り組んでいます。誰もが安心して子どもを産み、育てられる社会の構築をめざし、全力を挙げます。