ニュース
【主張】奄美・沖縄 世界遺産に 保全と活用の両立を進めたい
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は26日、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島県、沖縄県)を世界自然遺産に登録すると決定した。
多くの固有種が生息し、生物多様性を保全する上で、国際的に重要な地域である点が高く評価された。国内の自然遺産への登録は2011年の「小笠原諸島」(東京都)以来10年ぶり、5件目となる。決定を大いに喜びたい。
日本は18年の登録をめざし17年に推薦書を提出したが、国際自然保護連合(ユネスコの諮問機関)から対象区域などの見直しが必要として登録延期を勧告された。これを受けて19年2月に改めて推薦書を提出した末の登録だけに、努力を重ねてきた関係者の喜びはひとしおだろう。
大切なのは、自然遺産の保全と活用の両立である。
世界自然遺産への登録により国際的な認知度が向上し、コロナ後の観光客の増加が期待できる。地域振興に大きな追い風となるに違いない。
一方で、貴重な自然を後世につないでいく責任の重さも忘れてはならない。課題に向き合い、しっかりと対策を進める必要がある。
まずは、観光客の急増によって自然環境や住民の生活環境が悪化する「オーバーツーリズム」(観光公害)への対応だ。これまでに登録された世界遺産ではゴミが増えて自然を損なったり、観光客が住民の生活圏に無断で立ち入りプライバシーを侵害する事例が問題になっている。
観光客の人数規制や認定ガイドの同行といったルール作りが求められよう。
希少動物の保護も重要だ。国の特別天然記念物のアマミノクロウサギは奄美大島と徳之島、イリオモテヤマネコは西表島だけに生息する。対象の4地域で確認された絶滅危惧種は95種に上る。
ところが、こうした動物が車にひかれて命を落とす「ロードキル」が増えている。動物が道路に侵入しづらい工夫や出没する地点での注意喚起といった対策強化が必要だ。
いずれも、今回の登録に際して世界遺産委員会から対応を要請された内容だ。政府や自治体は、地元関係者と協力し、早急に取り組みを進めてほしい。