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2021年7月20日

コラム「北斗七星」

〈広島や卵食ふ時口ひらく〉。岡山県出身で新興俳句の代表的俳人、西東三鬼は原爆投下後の広島を訪れ被爆地を題材にした連作を詠んでいる◆掲出句の自句自解には、「未だに嗚咽する夜の街。旅人の口は固く結ばれてゐた。うでてつるつるした卵を食ふ時だけ、その大きさだけの口を開けた」とある。広島の惨状を目の当たりにした旅人・三鬼は言葉を失った。沈黙の重さに対比された、一個の白いゆで卵の圧倒的な存在感が絶妙である◆作者の自解を知らなかったので長らく、この句をこんな風に解釈していた。被爆して重傷を負った一人の若者が床に伏している。瞳を大きく見開き黙したまま。看護する人が滋養にと、ゆで卵を差しのべる。若者は静かに口を開いた――。まあ、いろんな鑑賞を許すところも名句たるゆえんか◆被爆地は二重の意味で言葉を失った。戦後、連合国総司令部(GHQ)による報道統制で原爆に関する一切の言論が禁止された。被爆者が沈黙を強いられ、国からの援護もなく放置されたことは記憶に留めおかれねばならない◆被爆76年の「8月6日 広島原爆の日」が近づく。図らずも今年は東京五輪の開催期間中に迎えることになった。「核兵器のない世界」の実現を求める被爆者の切なる声が世界に届くような「平和の祭典」になればと願う。(中)

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