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子ども食堂に備蓄米 無償提供が大幅拡充
子ども食堂や子ども宅食、フードバンクへの「政府備蓄米」の無償提供について農林水産省は1日から、交付されたコメを使い切った団体に対する追加申請の受け付けを開始した。備蓄米の無償提供は公明党の粘り強い訴えで昨年5月に始まり、その後も事業の拡充を重ねてきた。関係者の喜びの声と共に紹介する。
今月から、年3回まで追加申請可能に
備蓄米の無償提供を巡り、意見を交わす近藤さん(右)と椿区議=東京・大田区
「おコメは命をつなぐ大切な食材。本当に助かる」――。こう話すのは、東京都大田区で子ども食堂「気まぐれ八百屋 だんだん」を運営する近藤博子さん。昨年度は農水省から精米60キロの提供を受けた。
“地域の居場所”をつくりたいと、近藤さんは毎週木曜日の夕方に子ども食堂を開催している。コロナ禍でも利用しやすいよう考案した「どんぶり弁当」は、仕事と育児に追われる母親らに大好評。一日に5キロ弱のコメを炊き、すでに政府備蓄米は底を突いた。新たな方針決定を受け「追加申請したい」と話していた。
政府備蓄米は1回の申請につき、子ども食堂には上限90キロ(今年4月に60キロから引き上げ)を支援。子育て家庭にコメなどの食材を届ける子ども宅食には、同300キロを提供する。
これまで申請は年に1回しかできなかったが、適切に使い切った場合には、今月以降、追加の申し込みが可能になった。追加申請の機会は年度内に3回設けられ、受け取れるコメの最大量は4倍に拡大した。
申請は農水省が直接受け付けており、同省の担当者は「不明な点があれば気軽に相談してほしい」と話す。問い合わせは穀物課消費流通第1班(℡03-3502-7950)まで。
東京・大田区では手続きサポート
全国の子ども食堂は昨年12月段階で約5000カ所(NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の調査)に上るが、政府備蓄米の提供実績は6月末時点で233件。子ども食堂の多くはボランティアが支えており、行政手続きに不慣れなことから申請に至らない団体も少なくない。
大田区では申請者の負担を減らす観点から、区福祉管理課の職員が書類作成を支援し、複数の団体の申請書を取りまとめて農水省に提出している。昨年度は延べ8団体への円滑な備蓄米の提供につなげた。
「手続きが煩雑で難しい」との現場の声を行政に届ける役割を果たしたのが、区議会公明党の椿真一議員だ。政府備蓄米の活用が進むよう尽力してきた。
公明の強い主張が結実
現場の声踏まえた改善も
政府備蓄米を巡っては、公明党「食育・食の安全推進委員会」の竹谷とし子委員長(参院議員)が17年3月の参院農水委員会で「生活が困窮して食べ物が足りない人々、フードバンクや福祉に回すべきだ」と提案。しかし農水省は、米価下落につながりかねないと慎重な姿勢を崩さなかった。
その後、コロナ禍による困窮家庭の増加を受けて竹谷氏は再度、農水省に備蓄米の無償提供を要望。その結果、同省は子ども食堂などが「学校給食の補完機能を果たす」として、昨年5月に無償提供を開始した。
事業開始後も、竹谷氏は地方議員から現場の実情を聞き、稲津久衆院議員らと連携して制度の改善、拡充を形にしてきた。玄米だけでなく精米での提供も可能になったほか、申請者の費用負担ゼロで保管倉庫からコメを運送できるようにもなった。
関係者に幅広く周知を
党農水部会長 稲津久衆院議員
子ども食堂や子ども宅食の運営に携わる皆さまを応援しようと、公明党は政府備蓄米の無償提供に取り組んできた。
実施当初は運送による備蓄米の受け渡しができないなどの不備もあったが、現場の要望を踏まえ、より利用しやすくなるよう改善も進んだ。さらなる利用促進へ、幅広い周知に努めていきたい。
この事業には、日本の優れた食文化「ごはん食」について、子どもたちに理解を深めてもらう食育としての意義もある。コメは栄養バランスが非常に良く、どんな食材にも合うが、消費量は減少傾向にある。事業を通じて、ごはん食の拡大にもつなげていきたい。
政府備蓄米
コメの大凶作に備えるため、政府として常時、約100万トンを貯蔵。鮮度を保つため、玄米の状態で温度15度以下・湿度60~65%の倉庫内で保管されている。