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災害協定で出水期に備え
IT企業 バス事業所 ホテル と
スマホなどで避難所の状況確認
障がい者ら空室へ分散避難
交通弱者の輸送、最大70台
茨城・坂東市
茨城県坂東市はこのほど、避難所の混雑状況配信サービスを提供している「株式会社バカン」、市内でホテルを経営している「ホテルグリーンコア坂東」、市内貸切バス事業所6社と災害協定を締結した。市が力を入れる「災害に強い地域づくり」の一環で、災害時、円滑に住民の分散避難を実施するとともに、避難所までの移動手段がない交通弱者を輸送することが目的。出水期に備え、安全・安心の避難体制を整える。
市の担当者から「VACAN」についての説明を受ける桜井市議(左端)
現在、新型コロナ感染防止の観点から、坂東市は、避難所が「3密」にならないように従来の2.5倍となる1人当たり約5平方メートルの面積を確保する方針を打ち出しており、分散避難の必要性が高まっている。市と災害協定を結んだ株式会社バカンが配信サービス「VACAN」で、災害時に市内40カ所ある避難所の混雑情報をリアルタイムで専用サイトに提供。パソコンやスマートフォン(スマホ)で市のホームページのリンクなどからアクセスできる。
各避難所にいる市職員は、混雑具合を「空いています」「やや混雑」「混雑」「満」の4段階で同サービスの地図上に反映。避難所の混雑具合が一目で分かるため、「3密」を避けてスムーズに分散避難できる。
また、市は、指定避難所以外への分散避難にも取り組む。利根川氾濫などの大規模災害時は、避難生活の長期化と避難所の混雑が予想されるため、協定を結んだ「ホテルグリーンコア坂東」が空室最大120室を市に提供する。浸水想定区域内に住む妊産婦や障がい者らを主な対象とし、要配慮者に対応した分散避難を進める。
災害時には、浸水想定区域内に住む交通弱者の安全確保も求められる。このため、市内バス事業所6社は市の要請に応じて、大型バスを中心に最大70台を災害派遣する。浸水想定区域内に住む交通弱者を地域の公民館に集め、バスで安全な避難所まで輸送するほか、一時避難先としてのバスの活用なども検討中だ。
2019年10月に関東・東北各地で河川氾濫をもたらした「令和元年東日本台風(台風19号)」禍では、利根川や西仁連川が氾濫危険水位を超え、市は約1万7000世帯に避難指示を発令。当時の教訓から、避難所の混雑回避と、災害時に移動手段を持たない住民の輸送が課題となっていた。
公明党の桜井広美市議は昨年6月の定例会で、台風19号禍に、他市町の住民を含む多くの人が市内の避難所に詰め掛けたことを取り上げながら、分散避難による新型コロナ感染防止対策の必要性を指摘。中でも、妊産婦や重度の心身障がい者らに配慮し、ホテルなどを活用した分散避難を提案していた。