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コロナ禍 途上国の学校に打撃
日本の資金拠出が重要、「教育の党・公明党」に期待
日本リザルツ 白須紀子代表に聞く
コロナ禍は、世界各国で多くの児童・生徒から学校教育の機会を奪うなど大きな影響をもたらしている。特に、途上国の教育は今、深刻な危機に直面している。その現状と課題について世界の貧困問題などに携わるNPO法人「日本リザルツ」の白須紀子代表に聞いた。
女子児童・生徒が深刻/2000万人以上 中退の危機
コロナ禍における子どもの教育の現状は。
白須紀子代表 新型コロナウイルスの感染防止のため、世界で最大16億人の子どもが学校に通えなくなり、2020年だけで2400万人が退学したと推計されている。国連教育科学文化機関(UNESCO)の統計によると5月28日現在、24カ国で学校が閉鎖されており、2億1000万人超が依然として学校に戻れていない。
特に女性の教育が深刻だ。国連児童基金(UNICEF)のヘンリエッタ・フォア事務局長は、コロナ禍が「すでにひどい状況にある何百万人もの少女たちを一層厳しい状況に追いやっている」と指摘している。
今後、2000万人以上の女子児童・生徒が学校を中退する可能性があると推計されており、学校閉鎖が原因で、性暴力、家庭内暴力などが増え、18歳未満の結婚(児童婚)、10代の妊娠が増えるなどの問題も起きている。
コロナ禍による学校閉鎖が長引けば、子どもは教育面にも、健康面にも、生涯にわたる悪影響を受ける。
一方、コロナ禍では学校を再開することの課題も多い。低所得国では一つの教室に100人以上の子どもが“すし詰め”で授業を受けている。ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保や、手洗い徹底のためのインフラ整備などが必要だ。これに向ける予算が十分確保されていない。
各国ともコロナ対応に予算を集中せざるを得ず、国によっては教育予算が削減されている。
白須 中でも低所得国は、そもそもの教育予算が少ない。今こそ国際社会の支援がなければ、先進国との教育格差は今以上に拡大してしまう。全ての子どもが平等に質の高い教育を受けられる「強靱な教育システム」の構築に向けて、新たな投資が必要だ。
こうした中、「教育のためのグローバル・パートナーシップ」(GPE)が昨年、世界60カ国の低所得国の子どもの学習機会を守るために5億ドルを拠出した。しかし、必要な子どもに支援を行き届かせるための資金需要は、コロナ禍の長期化で高まり続けており、足りていないのが実情だ。
7月の国際会議が正念場
講じるべき対策は。
白須 低所得国での教育サービスを継続させるには、最低50億ドルが必要とされる。50億ドルあれば、世界の1億7500万人の子どもが学べ、8800万人の子どもが新たに学校に通えるようになる。
今年7月下旬、英国で「グローバル教育サミット」が開催される(議長国は英国とケニア)。今月開かれる先進7カ国(G7)首脳会議でも教育が主要議題になると見込まれている。教育分野の国際協力を前進させる正念場であり、日本には全ての子どもが安心して学べる環境づくりを主導してほしい。
具体的には、日本政府に低所得国への教育支援に特化したGPEへの支援強化を求めたい。G7のうち、すでに日本以外の6カ国はGPEに対する拠出額を増やすと表明している。日本の教育分野における政府開発援助(ODA)拠出額は世界4位だが、GPEへの拠出額はG7平均の10分の1にも満たないのが現状だ。
教科書無償配布をはじめ幼児教育の無償化など、長年にわたり最も熱心に教育の充実に取り組み、実際に前に進めてきた「教育の党・公明党」には、低所得国に対する教育支援の強化に向けた国際協力の推進を期待している。
また、コロナ禍における教育支援のために昨秋発足した国際教育議連(現在49カ国・290人の議員が参加)への参加促進も求めたい。すでに公明党から3人が参加しているが、弱者に配慮した公平な教育政策の重要性を理解しているのは公明党議員であり、一人でも多く加わってほしい。
しらす・のりこ
1948年生まれ。91年12月に「骨髄移植推進財団(現・日本骨髄バンク)」のボランティアに参加し、骨髄バンクの啓発活動などに尽力。2006年から日本リザルツでボランティアを開始し、07年にエグゼクティブ・ディレクター(代表)に就任。世界の貧困・飢餓の解決や、ワクチン支援などに取り組んでいる。