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【主張】わいせつ教員対策法 児童生徒への性暴力根絶めざす
教員による児童生徒への性暴力対策を強化する「教育職員による児童生徒性暴力防止法」(議員立法)が5月28日、成立した。
わいせつ行為などで懲戒免職になった教員が免許の再取得を申請した場合、都道府県教育委員会(教委)に交付を拒否する裁量を認めたことが柱だ。学校現場で子どもの安全・安心を守ることは最優先事項であり、被害の根絶へ新法を制定した意義は大きい。
2019年度にわいせつ行為やセクハラで懲戒免職などの処分を受けた公立小中高校などの教員は273人に上る。過去最多だった18年度の282人に次ぐ処分件数で、増加傾向にある。教員の優越的な立場を悪用し、心身に生涯消えない深い傷を負わせる行為には怒りを禁じ得ない。
現行制度では、教員が免職となっても3年たてば教員免許を再取得できる。このため、処分歴を隠してほかの自治体で教職に復帰し、わいせつ行為を繰り返す悪質なケースが問題になっていた。
そこで新法では、教委が第三者による審査会で意見を聴いて再交付の可否を判断できるようにした。不適格な人物が再び教壇に立つことは許されない。免許の再取得を厳格化するのは当然と言える。
また、児童生徒へのわいせつ行為については、同意の有無にかかわらず、刑事罰の対象とならない行為を含めて「児童生徒性暴力」と定義し禁じた。わいせつ行為で免許を失効した人の情報を共有するデータベースを国が整備することも規定した。
文部科学省は昨年、免許再取得を一律に禁止する法改正を検討したが、憲法が保障する職業選択の自由や、禁錮以上の刑でも終了後10年で消滅する刑法の規定が壁となり、断念していた。
このため公明党が主導し、教委が再交付を拒めることを柱とする法案を自民、公明両党の与党ワーキングチームが取りまとめ、与野党の合意形成を図り成立につなげた。
今後は文科省が具体的な運用の基本指針を策定する。教委によって再交付の判断にばらつきが生じないようにしてほしい。被害者が声を上げやすい環境の整備や、被害の早期発見、心のケアへの取り組みの充実も急ぐべきだ。