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暗所視支援眼鏡の購入、全額負担を1割に
「患者に希望と安心」
就学・就労や避難時にも有効
熊本市
熊本市は4月から、網膜色素変性症の患者らが使用する暗所視支援眼鏡について、国や自治体が購入費を補助する日常生活用具給付事業の対象品目に追加した。市によると、これまで全額自費だった同眼鏡を原則1割負担で購入可能にしたのは、政令市では初の試み。公明党の秋野公造参院議員と井本正広、吉田健一両市議は先ごろ、熊本県網膜色素変性症協会の山本悟会長と共に市役所を訪れ、大西一史市長と懇談した。
暗所視支援眼鏡の購入費の助成実現を喜び合う秋野氏(右から2人目)と(左隣から)大西市長、山本会長ら
網膜色素変性症は、暗い場所で物が見えにくくなる「夜盲」や、視野が狭くなる「視野狭窄」が進み、さらには視力が低下し、失明することもある病気。4000~8000人に1人の確率で発症するとされており、国の指定難病の一つ。治療法はまだ確立されていない。
暗所視支援眼鏡は、高感度カメラで捉えた映像を、使用者の目の前のディスプレーに映し出す仕組み。暗い場所でも明るく見えるほか、視野を広げたり、映像の拡大・縮小、明るさの調整といった機能を備えたりしている。一方で、販売価格は約40万円にもなり、個人で購入するには経済的負担が大きい。
同眼鏡を日常生活用具の対象品目に認定している自治体は全国にあるが、行政側がどれだけ負担するかは各自治体が決めている。熊本市では、患者らが申請書と医師が作成した意見書などを市に提出し、認可が出れば、利用者の購入費は原則1割負担で済む。
意見書には、同眼鏡の試用や白杖を使った訓練の効果を記入する項目があるなど、患者と医療機関の連携を促し、安全かつ適切な運用につなげる工夫が施されている。
懇談会の席上、山本会長は、「暗所視支援眼鏡は日常生活をはじめ、就学・就労支援や災害時の避難などにも役立つ。購入費の負担が大幅に軽減されたことは、患者にとって勇気と安心につながる」とし、市の措置について謝意を述べた。
大西市長は「これまでは価格の面で(購入の)ハードルが高かった。少しでも患者の皆さんのお役に立てれば、うれしい」と応じた。
秋野氏は「(購入費の1割負担が)政令市で最初という点や、医療機関と連携している点に着目したい。熊本市の取り組みを『熊本モデル』とし、全国の自治体に波及していくよう、引き続き地方議員と共に後押ししていく」と決意を新たにしていた。
公明が精力的に推進
同眼鏡の購入費助成については、公明党の前田憲秀県議と井本市議が2018年9月、山本会長と共に大西市長に対し要望書を提出。吉田市議も19年6月と20年9月の定例議会で、同眼鏡を日常生活用具の対象品目に加えるよう訴えるなど、精力的に推し進めてきた。