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2021年5月19日

コラム「北斗七星」

「誰でも癩になった刹那に、その人の人間は亡びるのです(中略)あなたは人間ぢゃあないんです」(小説『いのちの初夜』勉誠出版)。癩病と呼ばれたハンセン病で20歳から隔離され、23歳で逝った北條民雄が、同病の療養所(現・多磨全生園=東京都東村山市)で1935年につづった一節だ◆最近、全生園の実情を知る先輩に会うと、「“あの時”から流れが変わった」と言う。それは20年前の5月、熊本地裁が、ハンセン病患者に対する国の隔離政策を違憲と断じて賠償を命じ、公明党の強い要請で国が控訴を断念、判決が確定した時のことだ◆ハンセン病の感染力は極めて弱く、特効薬も普及したのに、隔離政策を続けた国の人権侵害を司法が断罪、「人間回復」の判決と呼ばれる。いま、コロナ禍で、感染者や医療従事者などが差別や偏見にさらされている現実が頭をよぎる◆冒頭の一節は療養所で入所者が、新来の患者に吐いたせりふだが、さらに「しっかりと癩者の眼を持たねばならないと思ひます。さうでなかったら、新しい勝負は始まりません」と諭す。そこで生きるには、こんな覚悟を強いたのか◆その全生園に、東京五輪の聖火リレーが7月に来る。コロナに命を奪われた同市出身の志村けんさんも走るはずだった。ここから新しい人権の聖火が社会を照らすことを祈る。(三)

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