ニュース
NEWS ここがポイント
新型コロナウイルスの国産ワクチンの開発に関して公明党が行った緊急要望と、今国会で成立したデジタル改革関連6法について解説する。
公明、国産ワクチンで緊急要望
菅首相(中央右)に緊急要望を行う石井啓一幹事長(左隣)ら=4月28日 首相官邸
日本特有のコロナ変異株の発生に備え、来年の供給めざし早期開発を主張。最終治験への支援求める
Q 日本では海外製ワクチンを使っているが、国産ワクチン開発も急ぐべきではないか。
A 国産ワクチンの開発は、わが国における医療の安全保障や財政、国際貢献などの観点から重要だ。
医療の安全保障の観点からは、ワクチンの安定供給とともに、日本特有の変異株が発生し、海外企業が対応してくれない場合を想定しておく必要がある。財政面では、海外製ワクチンは国費で購入しているが、国産ワクチンなら、収益は法人税などで国庫などに還元される。国際貢献の点では、東南アジアなどの国々は、医療・健康支援に対する実績と信頼の上から、日本のワクチン供給を求めている。
Q 現在の開発状況は。
A 公明党が代表的な製薬企業4社からヒアリングを行ったところ、最終段階の治験(第3相試験)が実施困難という共通の課題に直面していた。
最終治験では、約2万人に開発中のワクチンを接種し、他の約2万人に偽薬を投与して、双方の感染状況を比較しながら効果と安全性を確認する。
大規模に行う必要がある第3相試験について、わが国では、感染者数が海外に比べ少ないため、主に海外で実施することを想定している。しかし、感染拡大とワクチン接種が同時に進む中で、治験の協力者に偽薬の使用を了解してもらうことは容易でない。治験を実施する国の協力も不可欠だ。
Q 政府による支援が必要ではないか。
A その通りだ。公明党は4月28日、菅義偉首相に緊急要望を行い、国産ワクチンを2022年にも供給できるよう、早期の開発と生産体制整備を強力に進めることを求めた。菅首相は理解を示し、「よく検討したい」と応じた。
要望では、特に第3相試験について、国の財政支援も含めて「どのように行うべきか早急に示す」よう求め、協力国との調整や交渉は「メーカー任せにすることなく、国が前面に立って対応すべき」と主張。さらに、政府開発援助(ODA)を活用した国際共同治験への支援も提案するとともに、第3相試験の実施が困難な事態に備え、第2相試験の強化と併せて、他の検証試験で代替できるか検討するよう求めた。
デジタル改革関連法が成立
内閣直属の「デジタル庁」を9月1日に新設することなどが柱。公明党の提言が随所に反映
Q デジタル改革関連6法が12日に成立したと聞いた。
A 内閣直属の「デジタル庁」を9月1日に新設することなどが柱だ。同庁をマイナンバーの活用拡大、地方自治体の行政システム統一化などに向けた司令塔とし、行政手続きのオンライン化推進や利便性向上をめざす。この関連法には、公明党の提言が随所に反映されている。
デジタル庁は首相をトップに500人規模でスタートし、100人以上を民間から採用する。デジタル化を阻害してきたとされる行政の縦割り打破を図るため、強い総合調整機能が与えられている。
Q デジタル庁新設以外の柱は。
A これまでのIT基本法を廃止し、デジタル社会の基本理念を明記したデジタル社会形成基本法を制定した。
また、デジタル社会形成関係整備法を定め、①行政上の押印手続き見直し②国、民間、地方で異なる個人情報保護ルールの統一③マイナンバーカード機能のスマートフォンへの搭載――などを盛り込んだ。
災害時などの現金給付を迅速化するため、マイナンバーと預貯金口座のひも付けを任意で可能にする仕組みも創設した。このほか地方公共団体情報システム標準化法で、自治体ごとに異なるシステムの仕様を国の基準に合わせることを求める。
Q 公明党の主張は。
A 公明党は昨年11月、菅義偉首相に提言を手渡し、「豊かな国民生活と誰一人取り残さない社会の実現」を主張。その上で、デジタル庁は官民から人材を集め、関係閣僚に対する勧告権限を付与するよう求めた。また、自治体ごとで異なっている業務システムの標準化も要望。さらに、高齢者や障がい者がデジタル機器をスムーズに利用できるようサポートの必要性も強調した。
山口那津男代表は、成立したデジタル改革関連法について「デジタルインフラを整えていくための大きな基礎となるものだ」と評価。竹内譲政務調査会長は、同関連法でマイナンバーと預貯金口座のひも付けが可能になったことから、災害時などの現金給付について「スムーズに進むと期待している」と強調している。