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2021年5月16日

重要土地調査法案とは 

公明「自由な取引」尊重を主張

自衛隊基地など安全保障に関わる施設の周辺にある土地に関し、所有者と土地利用の状況について調査し、その結果、基地の機能を阻害する場合には利用規制も可能にする重要土地調査法案が国会で審議入りした。同法案の概要と公明党の主張を紹介する。

(内容)安全保障のために基地周辺を“注視”

2014年1月に航空自衛隊千歳基地に近接する苫小牧市内の約8ヘクタールの土地が外国資本に取得され、同年6月、千歳市長は「外国資本の土地取得に関わる法整備は自治体の権限を越える。国防の観点から、国において適切に対応されるべきだ」と訴えた。土地取引や利用の実態を調べることは容易ではなく、自衛隊施設のある自治体から情報不足への懸念が示されていた。

法案(重要施設周辺および国境離島等における土地等の利用状況の調査および利用規制法案)は、安全保障の観点から、重要施設周辺と国境離島の土地利用に関し、調査・規制の権限を国に与えた。

重要施設とは①自衛隊と在日米軍の施設②海上保安庁の施設③原発など生活関連の重要施設――で、法案は重要施設の敷地のおおむね1キロメートルの範囲内を注視区域として調査・規制の対象とした。特に、司令部機能をもつ自衛隊基地などは特定重要施設とし、国境離島も特に安全保障の観点から重要な島を特定国境離島と定め、それらの周辺は特別注視区域として調査・規制をさらに厳しくしている。

調査方法は、行政機関のもつ住民基本台帳などの公簿情報の収集、また、土地利用者からの報告徴収もできる。

そして、重要施設の機能を阻害するような電波塔などがあれば利用中止勧告や命令、さらに国による土地の買い取りも可能にした。

(論点)個人情報の保護と最小限度での規制

法案は所有者の国籍を問わず私有地を調査し、利用中止の勧告・命令もできる強い権限を政府に与えている。

そのため、土地に関する個人情報をどう守るか、また、利用中止の勧告・命令が恣意的に行われないためにどうするかについて、公明党は多くの提案をしてきた。

その結果、調査や勧告・命令などの措置を行う場合の留意事項として、政府原案にはなかった「個人情報の保護に十分に配慮」「必要な最小限度のものとなるようにしなければならない」との規定が入った。これは他の条文の解釈や、法案成立後に政府が策定する基本方針の指針となるため非常に重要である。

また、重要施設の周辺は注視区域に指定されるが、重要施設には自衛隊、在日米軍の施設などが含まれ、自衛隊施設だけでも全国に約1300もある。その周辺区域全てを注視区域にすると、自由な土地取引に多大な影響が出る。

公明党は、注視区域に指定する際の重要施設について類型化して示すよう求めた。政府は①部隊の活動拠点②部隊の通信や装備品の整備・補給機能をもつ施設③装備品の研究開発施設④防衛に関連する戦略研究施設――の4類型を示し、自衛隊施設の半数が該当すると述べた。また、特別注視区域についても同様の類型化を求め、政府は①指揮中枢・司令部機能②警戒監視・情報機能③防空機能――をもつ施設と④離島に所在する施設とした。こうした指定基準は基本方針に明記される。

しかし、この指定基準に該当すれば全ての区域が指定されるわけではない。公明党は法案に「経済的社会的観点から留意」するとの規定を加えさせた。これにより大都市の市街地にある自衛隊施設の場合、特別注視区域に該当しても注視区域として指定することが可能になり、土地所有者への負担軽減になる。

また、注視区域では調査に関する報告徴収、さらに特別注視区域では取引の事前届け出が刑罰付きで課せられる。報告徴収では政府がまず調査の努力を尽くした上で協力を求めること、中止命令違反ではどのような利用行為が安全保障機能を阻害するかを基本方針で具体的に示すことを求め実現させた。

「国家戦略」の中で対応を進める政府

土地利用を安全保障の観点から調査することは、13年に初めて策定された国家安全保障戦略でも「国境離島、防衛施設周辺等における土地所有の状況把握に努め、土地利用等の在り方について検討する」と記載されていた。その後も18年の海洋基本計画、20年の骨太の方針(経済財政運営の基本方針)などでも同様の方針が示されていた。

すでに防衛省は防衛施設に隣接する土地所有の状況について計画的な調査を実施、約650の防衛施設について17年度までに一巡目の調査を終え、二巡目に入っている。20年2月の衆院予算委員会で防衛副大臣は調査結果について「現時点で、防衛施設周辺の土地の所有によって自衛隊の運用等に支障が起きているということは確認されていない」と答弁した。

政府は、状況把握を確実にするための新たな調査権限と、問題に対処できるだけの利用規制の権限が必要として法案を提出した。

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