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【主張】注目度高まる北極圏 国際ルールの確立、日本が主導を
北緯66度33分39秒より北の地域の「北極圏」。夏季以外は大部分が凍結しているこの地域に、アジア諸国の中で最も近いのが日本である。
その日本が、北極圏に積極的に関与していく姿勢を鮮明にしていることは重要だ。今月8、9の両日、東京都内で開かれた「北極科学大臣会合」は、日本の提案によりアジアでの初開催が実現したものである。コロナ禍のため、各国の大臣はオンラインで参加し、都内の会場には大使が出席するという形となった。
同会合には、日本とアイスランドが共同議長国となり、米国やロシアをはじめとする北極圏の8カ国のほか、中国やインドなど北極圏に関心を持つ21の国と地域が参加。北極圏に暮らす六つの先住民の団体も加わった。
参加国・地域は、▽北極圏の観測と科学的調査の強化▽天然資源採掘や航路利用などにおける持続可能な開発の視点の重要性の確認▽先住民の伝統的な知識の活用――などで国際連携を深めていくとした共同声明に署名した。これを基に、北極圏に関する国際ルールの創設を急ぐべきである。北極圏には国際条約が存在しないためだ。
北極圏は天然資源の宝庫である。未発見原油の約3割が存在すると推定されているほか、北極海の大陸棚には、世界の天然ガスの大部分が埋蔵されているとみられている。
ロシア、カナダ、米国、デンマークなどの北極圏国だけでなく中国、韓国、インド、ブラジルといった国々も、北極圏での天然資源開発に向けて動き出している。
近年の地球温暖化の影響で海氷が減少し、アジアと欧州を結ぶ「北極海航路」も開け始めている。距離は、インド洋からスエズ運河を経由する南回りのルートより4割近くも短く、貨物船の輸送コストを大幅に削減できることから、新たな海運ルートとしての実用化がめざされている。
一方、北極圏での天然資源開発が生態系に悪影響を及ぼす恐れがある。また、北極海航路の実用化で、対馬、津軽、宗谷の3海峡を利用する外国船舶の急増が見込まれており、海洋環境の悪化や海難事故の増加も懸念される。北極圏に関する国際ルールの確立を日本の主導で進めたい。