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70歳就業法 施行1カ月
シニアの活躍できる職場へ
希望に沿った働き方 広がるか
経済上の理由、生きがいが背景
70歳まで働くことを希望する社員に対し、就業機会の確保を会社の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法(70歳就業法)が4月から始まった。シニアの活躍が広がる中、社員の意向を重視して工夫をしながら“生涯現役”の職場づくりを進める会社もあり、65歳超の雇用定着に関心も集まる―。シニアの働き方に詳しい内田賢・東京学芸大学教授のコメントと共に紹介する。
60歳以上の労働者を対象にした内閣府調査(2020年1月実施)では、少なくとも70歳くらいまで働きたいと答えた人の割合は合わせると87%に上る。労働政策研究・研修機構の調査(19年7~8月実施)では、60代の労働者に仕事をしている理由を尋ねた結果(複数回答可)、「経済上の理由」(約76%)が最も多く、「生きがい、社会参加のため」(約33%)が続く。
実際に20年6月現在、65歳を超えて働ける会社は約33%を数え、シニア雇用は拡大傾向をみせている。
3カ月ごとの勤務形態変更が可能
働きやすい職場づくりを進める会社の一つに、富山県高岡市の「協伸静塗株式会社」(加藤一博・代表取締役社長)がある。
金属製品塗装業の同社は社員28人で、うち3人が65歳超の社員。賃金は時間給制。人手不足を背景に、60歳定年後の再雇用の上限年齢は15年から撤廃した。
同社の65歳超の社員に歓迎されているのは、事情に応じて変更できる勤務形態だ。3カ月ごとの再雇用期間の都度、パートや週4日などを見直すことができる。週5日9時から15時まで勤務する男性社員(68)は「勤務時間を3カ月間隔で相談できるので助かる」と評価。加藤社長は「65歳超の定着は、一人一人の要望にできる限り応えることがポイント」と指摘する。
休日を“欠勤表”に自己申告で記入
働きやすい職場づくりを進める会社の一つに、富山県高岡市の「協伸静塗株式会社」(加藤一博・代表取締役社長)がある。
金属製品塗装業の同社は社員28人で、うち3人が65歳超の社員。賃金は時間給制。人手不足を背景に、60歳定年後の再雇用の上限年齢は15年から撤廃した。
同社の65歳超の社員に歓迎されているのは、事情に応じて変更できる勤務形態だ。3カ月ごとの再雇用期間の都度、パートや週4日などを見直すことができる。週5日9時から15時まで勤務する男性社員(68)は「勤務時間を3カ月間隔で相談できるので助かる」と評価。加藤社長は「65歳超の定着は、一人一人の要望にできる限り応えることがポイント」と指摘する。
休日を“欠勤表”に自己申告で記入
長崎県南島原市で農産物の集荷販売を行う「株式会社松尾青果」(松尾博明・代表取締役)は、社員自身の健康管理を重視する。
65歳定年の同社は従来から、希望者に年齢上限なく再雇用を行っている。正社員は日給月給制、パートタイムは日給制で、社員47人の2割が65歳を超える。
同社で特徴的なのは、休日の自己申告制だ。職場には出勤表ならぬ“欠勤表”があり、本人が休みたい日に印を入れれば、月6日分の休日や有給休暇などを自由に取得できる。風邪や頭痛の場合は×、腹痛は△などの印を付けるため、本人の健康状態も会社は把握できる。松尾代表取締役は「65歳超の社員が安心して働ける職場づくりのポイントは体力や健康への配慮。働く人目線の心遣いを大切にしている」と強調する。
公明、シニア雇用推進
公明党は、働く意欲のあるシニア世代が活躍できる社会をめざし、70歳就業法を推進してきた。
19年12月には、党全世代型社会保障推進本部長の石田祝稔政務調査会長(当時)らが政府に法整備を提言。国会質疑においても、労使合意の下、シニア世代が多様な働き方を選べる体制づくりの重要性を訴えている。
東京学芸大学 内田賢教授
労使協力し世界の模範に
生活資金の確保や生きがい、社会とのつながりなどを求めるシニアが、多様なスタイルで働ける70歳就業法を評価している。
少子高齢化で労働力が不足する中、これまでと変わらない貢献をシニアに求めるには、作業負担を軽減する機器や設備の導入、モチベーションを下げないための給与水準の維持など処遇の改善や公平な評価システムが求められる。
一方、60歳前の世代は、今後訪れる若手の育成という役割に備え、分かりやすい教え方など必要なスキルの習得に努めるべきだ。
同法の70歳就業の努力義務は近い将来、義務化されることも十分考えられる。世界の中でも高齢化が急速に進む日本で、働く人と雇う人の双方が協力し、世界の模範となるシニア雇用を実現してほしい。
制度の概要
高年齢者雇用安定法では、定年は60歳以上、社員が希望する限り65歳までの雇用を会社に義務付けている。選択肢は①65歳まで定年延長②65歳まで再雇用③定年廃止――。最も多いのは②で約8割に上る。
4月施行の70歳就業法は、65歳雇用義務に加え、70歳まで就業機会を確保する努力義務を会社に課した上に、“雇われない”働き方の選択肢として①(フリーランスなどで)70歳まで継続的に会社と業務委託契約を結ぶ②70歳まで継続的に(会社が出資するNPO法人などの)社会貢献事業に従事――を加えた。