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コラム「北斗七星」
雑貨商の男が仕事の合間に一人で外食をする。それだけを描いた漫画『孤独のグルメ』(原作・久住昌之)。テレビドラマにもなり、根強い人気がある。一人で食べる「孤高の行為」こそ<現代人に平等に与えられた、最高の癒やし>の言葉に共感を覚えるのだろう◆コロナ禍で「個食」「黙食」が推奨される今、“密のない”『孤独のグルメ』は感染症対策といえる。自ら望んだ『孤独のグルメ』は<幸福に空腹を満たす>ものの「望まない孤独」は不幸で空虚だ◆自粛生活がまさにそう。人と会えないことがストレスに感じることもある。事実、秋田大学(秋田市)が昨年、全学生を調査すると、回答者の約1割に中等度以上のうつ症状が見られた。要因を探ると、うつ症状の発症リスクは、喫煙者が非喫煙者の2.85倍で、飲酒者はほとんど飲まない学生の2.45倍だったという◆一方、運動習慣で3~6割リスクが下がり、相談相手がいる人は7割低くなることも分かった。同大の学生は、半数以上が県外出身者で一人暮らし。同様の傾向は、どこの大学にもあると予想される◆哲学者の三木清は<孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのでなく、大勢の人間の「間」にある>と『人生論ノート』に記した。不安を抱える人へ寄り添える社会の構築を急ぎたい。(川)