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【主張】パワハラ防止 分かりやすい定義どう示すか
重大な人権侵害となる行為を防ぐための確かな一歩とすべきだ。
厚生労働省の労働政策審議会の分科会は、職場での地位を利用して嫌がらせや、いじめなどを行うパワーハラスメント(パワハラ)の防止に向けた取り組みを、企業に義務付ける方針を示した。
分科会では、パワハラを▽優越的な関係に基づく▽業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により▽就業環境を害すること(身体的もしくは精神的な苦痛を与えること)――と定義。企業が対策を進めるよう法律で義務付けることを方針に盛り込んだ。
その上で、加害者の懲戒など厳正な対処や相談体制の整備、相談者のプライバシーの保護といった企業が取るべき措置について、改正法を受けた指針として政府が示すべきとした。
政府の調査によると、「パワハラを受けた」と回答した従業員は3割に上っており、パワハラが原因で、うつ病や自殺に至る深刻な事態も相次いでいる。しかし、現在はパワハラを規制する法律がないだけに、企業の取り組みを強化するための法整備に対する期待は大きい。
問題は、法律や指針の詳細を巡り労使双方からさまざまな声が噴出していることだ。
例えば、「業務上の指導とパワハラとの線引きが難しい」「世代間・業種間で受け止め方が大きく違う」といった指摘がある。特に経済団体側からは、対策を促進するためには定義をより明確にすべきとの意見が出されている。具体例をどう示せるかが今後の焦点となろう。
労働組合側からは、パワハラ行為自体を禁止する法律を求める声が強い。今回の方針では、違法行為の明確化などに課題があることから見送ったが、この点も含めて引き続き議論してほしい。
公明党も推進する政府の「働き方改革」の土台になるのが、誰もが働きやすい職場環境の整備である。実効性あるパワハラ対策が、そのための重要な要素となるのは言うまでもない。
厚労省は来年の通常国会に関連法案の提出をめざしている。政府の議論を注視しつつ、与党内においても活発に協議すべきである。