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【主張】タクシー 料金見直しの取り組みに注目
ドア・ツー・ドアで移動でき、24時間の対応が可能なタクシー。その利用料金の見直しに向けた取り組みに注目したい。
国土交通省とタクシー事業者は現在、東京都内で一律410円の迎車料金を変動制にする実証実験を実施中だ。
新たな仕組みは、利用客が少ない時期や時間帯の迎車料金を無料にするというもの。利用者の負担は大きく軽減されることになる。
一方で繁忙期や混雑する時間帯は、410円を超えることも含めて段階的な料金設定を試している。宿泊施設や旅客機などは需要に応じて利用料金を変動させているが、タクシー業界では初めてだ。
実証実験では、料金が安くなることで利用する人や、高くても利用するという人がどれだけいるかを検証する。
大手タクシー事業者の調査によれば、都内の1時間当たりの平均空車時間は、午後4時台が最も長く21.2分、次いで午前11時台が18.1分となっている。迎車料金の見直しにより空車時間を減らすことができれば、事業者の収入増にもつながろう。
このほかにも国交省は、北海道や関東、九州などの事業者と共に、高齢者らが割安にタクシーを利用できる定額運賃の実証実験を行っている。
これは、運転免許を返納した高齢者の通院や共働き世帯の子どもの塾通いの際、通常より割安の定額運賃を設定する。事業者がそれぞれ定めた区域や回数などの範囲内で一定期間乗り放題となる。
国交省は二つの実証実験の検証を踏まえ、新たな料金制度の方向性を示す予定だ。
タクシーは他の公共交通に比べ割高感があるため、利用者数は減少傾向にあり、この10年で3割も落ち込んでいる。一般のドライバーが自家用車で他人を有料運送する「ライドシェア(相乗り)」も一部地域で始まっており、タクシー業界を取り巻く環境は厳しさを増すばかりだ。
ただ、国交省の調査によると高齢者の外出率は増えていることから、高齢社会における移動手段としてタクシーの潜在力は高いとみられる。
この点からも実証実験の意義は大きく、利用者と事業者の双方にとってメリットがある仕組みを探ってほしい。