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コラム「北斗七星」
遥かに岩山が連なる荒涼とした平原を古ぼけた1台のバンが行く――。今年の米アカデミー賞作品賞の『ノマドランド』はアメリカ各地を漂泊する高齢労働者たちの孤独な生を見つめたロードムービー◆「ホームレスではなくハウスレスよ」。リーマン・ショックで家を失った女性が車に寝泊まりしながら短期労働の現場を渡り歩いていく。現代のノマド(遊牧民)と呼ばれる人々の寄る辺ない旅が心に染みた◆一方、社会の内側で貧困や孤立に陥っていく人たちを描いた映画といえば、ケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2016年)が忘れ難い。舞台はイギリスの地方都市。失業中の初老の男と若いシングルマザー一家との交流を軸に社会制度の冷たさや人間の尊厳について鋭く問いかけた作品である◆二人の子どもを育てる母親は飲まず食わずの生活で、生理用品を買う余裕もない。フードバンクでは空腹のあまり提供品をその場で貪るように食べてしまう。取り乱して「みじめだわ」と涙を落とすシーンに胸が締めつけられた◆コロナ禍で深刻化する社会的孤立への対応は待ったなしだ。公明党は対策本部が防止策の抜本的な強化に向けて精力的に調査を進めている。5月中にも政府に提言する予定と聞く。ぜひとも公明らしさを発揮してほしい。(中)