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【主張】ヤングケアラー 深刻な現状も、的確な手を打て
病気の親の世話や家事などに追われる18歳未満の子どもを「ヤングケアラー」と呼ぶ。政府による初の全国調査で明らかになった実態には、胸が締め付けられる。
調査は、公立中学校と全日制高校の2年生や通信制高校の生徒らを対象に、厚生労働省と文部科学省が昨年12月から今年1月にかけて行った。
その結果、中学2年生の約17人に1人(5.7%)、高校2年生では約24人に1人(4.1%)が、世話をする家族が「いる」と回答した。
世話の内容は、祖父母の身体介護、きょうだいの保育所への送迎、料理や掃除、洗濯などの家事全般を一人で担うといった、手伝いと呼べる範囲を超えたものが多い。
世話をする頻度では「ほぼ毎日」が中2の45.1%、高2で47.6%に上った。中2、高2ともに平日1日平均で約4時間を世話に費やしており、約1割は「7時間以上」と答えた。
これでは勉強はもちろん、クラブ活動や友人と遊ぶことも難しい。心身への影響も心配される。調査結果にある「今の状態はしんどい」との生徒の声が悲痛だ。
さらに深刻なのは、4割近くが自らをヤングケアラーだと自覚できていないことだ。
ひとり親世帯のため本人が世話を当たり前と思っていたり、過度な負担を強いていることに親が気付いていないといった要因が指摘されている。ヤングケアラーの問題がこれまで表面化しなかったのも、一つにはこうした背景があるのだろう。
ヤングケアラーに対しては、既に厚労・文科両省によるプロジェクトチームが立ち上がっており、5月をめどに支援策をまとめる方針だ。今回の調査結果をしっかりと受け止め、的確な手を打ってもらいたい。
地方自治体も動き出している。例えば、神戸市では全国でも珍しい専門相談窓口を6月から設置する予定だ。また、埼玉県では教職員への研修を行い「欠席がちになってきた」「忘れ物が多い」といったSOSの兆候を見逃さないよう努めている。
公明党も国会や地方議会で支援の必要性を訴えている。子どもたちの声なき声をキャッチし、手を差し伸べたい。