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2021年4月7日

コロナ禍で注目 農家の収入保険

新型コロナウイルスの感染拡大は農業にも深刻な影響を与えている。日本政策金融公庫が行った今年1月の調査では、新型コロナで売上高にマイナスの影響があるとする農業者は64.6%に達した。こうした中、注目を浴びているのが農業者の減収リスクに幅広く対応する収入保険制度だ。公明党の推進で実現した制度の概要を解説するとともに、東京大学大学院農学生命科学研究科の中嶋康博教授にその意義などを聞いた。併せて、公明党の稲津久・農林水産部会長(衆院議員)のコメントを紹介する。

制度の概要
自然災害や価格低下に対応
最大、年収の8割以上を補償

農業者向け「収入保険制度」は、自然災害や農産物の価格低下、取引先の倒産などのさまざまな要因により、収入が減った部分を補?する制度。2019年1月からスタートし、運営は全国農業共済組合連合会が担っている。

補?金は掛け金(保険料、積立金など)のタイプで異なるが、基本タイプは、基準収入(過去5年間の平均収入)の9割を下回った場合、その額の9割(基準収入の8割以上)が補償される仕組みとなっている。保険金が支払われるまでは「つなぎ融資」も受けることが可能となる。

加入するには、確定申告の際に「青色申告」を行う必要がある。青色申告の実績が1年分しかない場合でも加入できるが、補償される限度額の上限は下がることになる。

収入保険がスタートする以前からある「農業共済」は、自然災害や鳥獣害などで作物に被害が及んだ農家を補償する制度で、全ての作物をカバーしているわけではない。

農業共済以外にも「収入減少影響緩和対策(通称・ナラシ対策)」や「野菜価格安定制度」など、農業者の収入減に対する補償を行う制度はあるものの、作物や産地が限定されており、対象にならない農業者も多いことなどが課題として挙がっていた。

その点、収入保険は、ビジネスとして多様化する農業経営にも対応可能な保険となっている。

コロナ禍においては、基準収入となる過去5年間の年収から、2020年の収入を算定に含めず、16~19年の4年から平均年収を割り出すことになっている。

生産者から「助かった」の声
加入者増へメリット周知を

東京大学大学院農学生命科学研究科・中嶋康博教授

東京大学大学院 中嶋康博教授に聞く

――新型コロナの感染拡大が農業に与えている影響は。

中嶋康博・東京大学大学院教授 外出自粛や飲食店への時短要請などの影響で食ビジネスが大きく変化している。特に外食産業が打撃を受け、外食向けの農産物の需要は低迷し、特定の企業と契約している農業者やそれを仲介する事業者などに影響が出ているという。

一方、巣ごもり需要が高まり、家で調理して食べる「内食」や、持ち帰りやデリバリーによる「中食」の需要が増えている。食品事業者は、そうした販路を強化しているが、分野によってはコロナ禍以前の需要に回復するまでには至っていない。

――どの農産物の需要が落ち込んでいるのか。

中嶋 米価がじりじりと値下がり続けている。元々、コメの需要は低下傾向だったが、そこにコロナ禍で外食需要が失われ、在庫が増加している。付加価値の高い農産物も同様に外食需要の低迷で、行き場を失ってしまっている。

――こうした中で収入保険が注目されている。

中嶋 多くの生産者は、こんなに売り先がなくなる時が来るとは思っていなかったのではないか。収入保険制度に加入していた生産者からは「助かった」という声も聴く。ただ、加入者数は農業共済などに比べるとまだ少ない。

――収入保険のメリットは何か。また、加入者が少ない要因は。

中嶋 収入保険のメリットは、意欲的な農業者の挑戦を後押ししてくれる制度だ。需要がある特別な野菜を作りたい、直売など市場出荷以外の販路を見つけたいなど、新たな挑戦にはリスクはつきものだが、収入保険はそうしたリスクを軽減してくれ、生産者は安心して規模の拡大などにも取り組める。

一方、農業共済など他の補償制度とは掛け金の仕組みが異なることもあり、理解が進んでいないのではないか。収入保険は加入することで、農業経営全体の見通しを立てることができるメリットがある。そのことを十分に周知すべきだ。

――コロナ禍を踏まえた今後の農業のあり方は。

中嶋 農業を振興するため、コロナ禍以前から政府が「成長産業化」に向けた政策を進めている。挑戦する農業者を後押しする仕組みを用意して生産者と実需者が結び付くようにバリューチェーン(価値連鎖)の構築に努め、さらに国内の需要喚起を進めてきた。

さらに、円安の追い風もあって付加価値の高い農産物の輸出を増やし、海外観光客のインバウンド需要も好調だったのだが、そこにコロナ禍が起きたのは残念だ。

心配な点は、コロナ禍による萎縮で、これまで築いてきた食ビジネスや消費システムがつぶれてしまうことだ。コロナが収束するまで持ちこたえられるよう支えていく必要がある。一方で、通販サイトなどを使って食材を直接販売するなど、新たな顧客をつかむたくましい取り組みも増えている。

コロナの収束後も見据えながら、日本の食ビジネスを守り、振興するための取り組みを政治には進めてもらいたい。

なかしま・やすひろ

1959年生まれ。東京大学農学部卒、同大学大学院農学系研究科博士課程修了。農学博士。東京大学農学部助手、同大学院農学生命科学研究科准教授などを歴任し、2012年から現職。

公明の推進で19年に導入。保険料補助する自治体も

公明党農水部会 稲津久部会長(衆院議員)

コロナ禍で多くの農業生産者が苦境に立たされている。新型コロナのような感染症に伴う農産物の需要低迷は自然災害と同じ予期できないリスクだ。こうした事態に対応するためのセーフティーネット(安全網)の整備をさらに進める必要がある。

コロナ禍で、農業者のセーフーティーネットとして注目されているのが、2019年1月から導入された、農家の収入保険制度だ。品目を問わず減収や作物の価格の下落など幅広いリスクに対応している点が評価され、21年の加入件数は、前年比1.5倍の約5万5000件となっている。

収入保険の導入について公明党は、農業生産者や関係団体などから幅広いリスクに対応できる制度をつくってもらいたいとの声を受け、10年以降の国政選挙で重点政策に掲げ、国会質問でも積極的に取り上げてきた。

その結果、政府は13年にまとめた農政改革の一環として導入を検討する方針を決定。16年に制度創設を盛り込んだ改正農業災害補償法が成立した。

ただ、導入当初は加入数が伸び悩み、掛け金の額が課題として挙がった。

農家の減収は地域経済にも影響することなどから、この保険料を助成する自治体が増えている。コロナ対策として交付された地方創生臨時交付金を活用して独自に支援する自治体も増えてきた。これは、公明党の地方議員も積極的に取り上げている。

今冬、地元・北海道では大雪が降り、大きな農業被害が出ている。さらに、日本列島は今後、出水期に突入する。引き続き収入保険をはじめ、農業経営全体を見据えた支援策を進めていく決意だ。

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