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医療的ケア児 支援強化へ
たんの吸引や人工呼吸器の装着などが日常的に必要な「医療的ケア児」について、支援の強化に向けた取り組みが進んでいる。超党派の国会議員の勉強会「永田町子ども未来会議」が取りまとめた「医療的ケア児支援法案」の主な内容と、医療的ケア児に特化した報酬基準の創設などを柱とした「障害福祉サービス等報酬」の改定について解説する。
超党派で法案取りまとめ、看護師の配置など手厚く
医療的ケア児は近年、増加傾向にある。医療の進歩により、従来は救命が難しかった子どもを救えるようになったことが背景にある。厚生労働省の推計では、19歳以下の在宅の医療的ケア児は2019年に2万人を超え、05年から約2倍に増えた。
こうした子どもを育てる家族にとっての大きな悩みが、預け先がなかなか見つけられないことだ。
保育所や放課後等デイサービスなどの事業所で預かる場合、看護師の配置など手厚い体制が必要で、通学が認められても保護者の付き添いを求められるケースが多い。そのため、受け入れが思うように進まず、ケアの主な担い手である母親が離職せざるを得ないなど、家族への負担が重くのしかかっている。
医療的ケア児は、16年に成立した改正児童福祉法で初めて法律上に規定され、適切な支援を行う努力義務が自治体に課されるなど支援体制が拡充。18年度の報酬改定でも、看護職員を手厚く配置し受け入れ態勢を充実させた事業所に加算するなどしてきた。それでもなお、現場のニーズに応えきれていないのが現状だ。
こうしたことから永田町子ども未来会議が発足、個々の状況に応じた適切な支援策を検討するため議論を開始した。支援の強化や予算的な裏付けを確保する必要性から、昨年10月に医療的ケア児支援法案の骨子案を作成し、今年1月に条文案をまとめた。
法案では、医療的ケア児が健やかに成長できる社会の実現や家族の離職防止を目的に掲げた。基本理念には、個々の状況に応じた切れ目ない支援や、医療的ケア児が18歳に達したり高校卒業後も適切なサービスを受けられる配慮、居住地域にかかわらず適切な支援を受けられる施策の実施を記した。
また、国や地方自治体に対して、医療的ケア児の保育・教育体制の拡充に向けた措置の実施を求めるとともに、看護師や医療的ケアを行う人材を配置するために必要な措置を講じると規定した。
さらに、家族の相談や情報提供などを担う機関「医療的ケア児支援センター」を都道府県に設置することも盛り込んだ。
厚労省、施設の受け入れ促進
厚労省は4日、4月に実施する「障害福祉サービス等報酬」の改定内容を決定。医療的ケア児の施設での受け入れ促進に向けた支援強化に重点を置いている。
具体的には、障害児通所支援の報酬体系に、新たに医療的ケア児の区分を創設。重い障害や病気ではないが、何らかの医療的ケアが必要な「動ける医療的ケア児」を見守る判定スコアを設定するとともに、医療的ケアの内容に応じた加算額を拡充し、看護師の配置に必要な費用を手当てする。医療的ケア児であっても、一般の障がい児と同じ報酬単価だったことが、受け入れが進まなかった要因とされ、改善した。
また、重症心身障がい児施設で医療的ケア児を受け入れる場合に、看護職員を追加で配置する要件を緩和し、報酬を加算しやすくした。
教育、福祉、医療の連携が重要
高木美智代 党障がい者福祉委員会顧問
NPO法人「みらい予想図」が運営する「重症児デイサービスいっぽ」で医療的ケア児の課題などについて担当者と意見を交わす山本参院議員(右端)ら=2020年1月27日 高知市
公明党は、国会議員と地方議員のネットワークを駆使し、医療的ケア児とその家族の切実な声に耳を傾け、支援の充実に取り組んできました。
きめ細かな支援策の提案は、学校における医療的ケアのための看護師配置事業の創設や、2016年の児童福祉法改正などに結実しています。今回の報酬改定でも、公明党が昨年12月に提出した要望書の多くが反映されました。
永田町子ども未来会議は15年から議論を開始し、公明党から私と山本博司参院議員が参加。この議論と同時並行して、党内でも医療的ケア児を受け入れる事業所の視察や、関係者らのヒアリングを重ねてきました。
未来会議でまとめた法案は今後、各党内で議論された上で、今国会に提出し、早期成立をめざします。
支援の充実には教育、福祉、医療の連携が重要です。公明党は引き続き、災害時における支援のあり方などの検討も進めつつ、地域を問わず適切な支援が受けられる環境づくりに尽力していきます。