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コラム「北斗七星」
今ごろの季節だろう。万葉集に一首ある。「雁は来ぬ萩は散りぬとさ雄鹿の鳴くなる声もうらぶれにけり」。雄鹿が雌を求めてなく声は、どこか哀切な響きを持つらしい◆ところが、中国最古の詩集・詩経の「呦呦(ようよう)たる鹿鳴、野の苹を食らう」は趣が異なってくる。「鳴きながら野の草をはむ鹿の姿から連想されるのは宴会」(『漢語日暦』 岩波書店)という。明治初期の洋館・鹿鳴館の命名は、この詩に由来するのは周知の通り。同じ鳴き声でも印象に隔たりがあるのは、お国柄の違いによるものか◆出入国管理法改正案の国会審議が始まった。この法案は新たな在留資格を創設し、人手不足が深刻な業種で単純労働も含めて外国人の就労を認める。異なる文化的背景を持つ人材の発想が、企業の技術革新をもたらす。外国人の感覚を生かした商品開発やグローバル化への足がかりになる。職場が国際色豊かになる利点は少なくない、と専門家は見る◆ただ、働く側にも受け入れ側にも不安がつきまとう。それを解消する具体策を国会で議論してほしい。職場環境の点検・整備は当然だが、とりわけ外国人が安心して暮らせる支援策をどうするか。福祉、住まい、医療、人権などで細やかな心寄せが望まれる◆そのためには、お国柄の違いが尊重される社会でありたい。(明)









