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【主張】韓国徴用工判決 「政治の正義」に立脚した対応を
両国歴代政権が積み上げてきた信義回復と友好促進の努力を、ほごにしかねない判決だ。到底、受け入れられない。
韓国大法院(最高裁)が植民地時代の強制労働を巡り、いわゆる元徴用工への賠償を日本企業に命じた問題である。
従軍慰安婦問題と同様、国家間の約束として決着を付けた歴史問題がまたも蒸し返された格好だ。これでは、真に未来志向の日韓関係はいつまでたっても構築されまい。
文在寅政権はどう対応するつもりなのか。注意深く見ていく必要がある。
元徴用工の請求権は、1965年の国交正常化の際に結んだ請求権協定で「完全かつ最終的に解決」されている。
韓国の歴代政権も一貫して「解決済み」との認識を堅持し、盧武鉉政権下の2005年には、協定に基づき日本が供与した5億ドルの経済協力金に個人賠償も含まれるとの見解をまとめ、韓国政府として補償を行ってきた。
にもかかわらず、判決はこうした経緯を無視するかのように「協定には賠償請求権は含まれない」との“新解釈”を示した。安倍首相が「国際法に照らしてあり得ぬ判断」としたのは当然である。
それにしても日韓間の相克は、いつになれば解消されるのか。先の戦争が残した負の遺産と、加害者としての日本の罪の大きさを改めて思わずにはおれない。
ただ、韓国側にも正してほしい点がある。戦後70年余、歴史主義の呪縛にとらわれない、純粋に合理的な法に基づく政治と外交の樹立だ。劇作家の山崎正和氏がいう「政治の正義」に立つ行き方である。
言うまでもなく法や条約、協定は「本質的に社会の秩序を目的」とし、これを仲立ちとする政治の正義の理想も「秩序と安寧」の実現にある。
これに対し、秩序より歴史的真実の追求を優先せざるを得ないのが、歴史主義に走る政治と外交だ。実際、今回の判決の背景にも、慰安婦問題で日本と和解した朴槿恵前政権への批判と一体をなす反日世論があるとの見方がある。
日本は歴史の事実に向き合う謙虚さを一層磨き、韓国は政治の正義に立脚する外交への脱皮をめざす――。徴用工問題が突きつけた、もう一つの重要テーマには違いない。