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コロナ禍の妊産婦を支援
家事援助や育児相談拡充
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、昨年1年間で生まれた新生児は全国で87万人余り(速報値)と1899年の統計開始以来、最も少なかった。政府は、1月に成立した2020年度第3次補正予算の「妊産婦総合対策事業」を積み増しすることなどで支援を強化している。同予算を活用し、施策を展開する自治体の取り組みを追った。
「安心して臨めた」
横浜市はコロナ禍の妊娠・出産、子育てを支援するために政府の20年度第2次、第3次補正予算を活用した援助策を充実させている。
このうち育児などの支援サービスでは、10年度から食事の準備やおむつの交換などを手助けする「産前産後ヘルパー派遣事業」、13年度からは助産師らが助言する「産後母子ケア事業」を有償で行っているが、コロナの影響が色濃くなった昨年4月以降は、里帰り出産できない人などにいったん納めてもらった負担金を全額払い戻す形で支援を始めた。
同市こども家庭課には、利用者から「親族の支援がない中でヘルパーさんに身の回りの世話をお願いした。経済的にも助かった」「助産師に育児方法などを相談した。安心して出産に臨めた」などの声が多く寄せられているという。
同市の丹野久美・親子保健担当課長は、「産前・産後は心身ともに不安定になりやすい時期。特に、初めての育児では一人で悩んでしまう母親が多い。国の予算も生かしつつ、妊産婦を支援につなげる取り組みを強化していきたい」と語る。
オンライン相談
コロナ禍で外出に不安を持つ妊産婦らを対象に、スマートフォン(スマホ)などを使った「オンライン相談」を1月から始めている自治体の一つが千葉市だ。同市も政府の補正予算を原資にした。
利用を希望する妊産婦は、メールで市内各区にある母子健康包括支援センターに申請する。スマホなどのビデオ通話で保健師と一対一の会話ができるのがポイント。出産準備や離乳食の進め方、子育て中のイライラへの対処方法など幅広く相談でき、栄養士や歯科衛生士の助言を受けることもできる。相談料は無料だ。
千葉市健康支援課の担当者は、「自宅からでも安心して相談できることがメリット。親族の支援が得られない妊産婦を孤独・孤立化させないことが重要」と強調する。
公明訴え 補正予算で対策事業
20年の出生数は5年連続で過去最少だった。厚生労働省人口動態統計の速報値では、19年比2.9%減の87万2683人。婚姻数は12.7%減り53万7583組で、減少率は19年と比べ1950年以来70年ぶりの落ち込みを記録した。
出生数の動向について、厚労省の担当者は、出産の中心世代である20~30歳代女性の減少に加え、「コロナ禍で婚姻が延期になったり、産み控えたりする影響が出ている」と指摘する。
2次分で延べ454自治体が活用
出生数の減少傾向を踏まえ、2003年の少子化社会対策基本法制定以降、政府は待機児童対策や保育料無償化などを進めるが、昨年来のコロナで状況が一変した。
公明党の主張を受け、政府は妊産婦の支援を相次ぎ拡充。20年度第2次補正予算で自治体の取り組みを支える妊産婦総合対策事業を創設し163億円を確保したのに続き、同年度第3次補正予算で事業費31億円を上積みした。
同事業は、2次補正で訪問型の育児支援、オンライン相談の負担割合を国と自治体で各2分の1とし、出産前の感染の有無を調べるPCR検査や感染した場合のケアなどについては国が負担。3次補正では切れ目のない対策へ、これらの施策を国が2分の1補助している。同事業の2次補正分における利用自治体数は全国で延べ454自治体(厚労省調べ)に上る。
不安和らげるサポートに全力
党厚労部会長 伊佐進一 衆院議員
公明党は、コロナ禍で胎児、新生児の感染や健康に不安を抱えながら日々を過ごす妊産婦の皆さまの支援に向け、党を挙げて取り組んでいる。
昨年5月には斉藤鉄夫副代表(当時、幹事長)ら、11月には竹内譲政務調査会長らが政府に提言。国と地方の党のネットワークを生かして現場のニーズを訴えた結果、20年度の2次、3次補正で対策費が確保された。相談先や支えてくれる家族がいなかったり、外出を自粛する妊産婦が一人で悩み孤立化することがないよう寄り添った支援の道筋を付ける形になった。
今後も妊産婦の皆さまが安心して出産、子育てできる環境づくりに全力を挙げていく。