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コラム「北斗七星」
「青年よ、大志を抱け」との言葉を残したウィリアム・スミス・クラークは札幌農学校(後の北海道大学)の初代教頭。1877年、彼が日本を去った後、同校に2期生として入学した宮部金吾は「クラークの植物学に寄せる関心の大きさに感嘆」(山本悠三著『札幌農学校の理念と人脈』)した◆日本を代表する植物学者となる宮部の同期生には、後に5千円札に肖像画が載る新渡戸稲造、『代表的日本人』の著者として知られる内村鑑三が。宮部は彼ら2人との学生生活を「最も親密の交際を致し(中略)始終行動を共にしました」(『内村鑑三君之小伝』)と記している◆2期生は「中々皆アンビシアス(大志がある)」で、宮部ら3人は卒業のころ、「社会に出るならば如何なる事を為すべきやをつくづくと話し合」っていた(同)◆卒業後、苦境にあった新渡戸は宮部への手紙に「(自分を)元気づけてくれ」とつづる。内村も宮部に、眼の病気悪化で引きこもる新渡戸のために「祈ってくれ」と書き送っている(松下菊人著『若き新渡戸稲造の英文書簡』)◆こんな若き日の交流で結ばれた生涯の友、内村、新渡戸を追って、宮部が90歳で逝ったのは70年前のきょう。今、卒業の季節、ポストコロナの時代を開く幾多の青年が、共に学び育んだ友情も固く、新たな一歩を踏み出す時か。(三)