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2021年3月9日

「エコチル調査」開始10年 安心の子育て環境へ

公明党が導入推進

環境省が2011年から実施している「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」が、今年で満10年を迎えた。子どもの健康に影響を与える環境要因を明らかにするため、全国10万組の親子が参加する大規模な疫学調査で、環境の党・公明党が導入を推進した。先月21日には、環境省などが主催する10回目の「エコチル調査シンポジウム」がオンライン上で開催された。最近の研究成果とシンポの模様を紹介する。

化学物質と健康 影響探る
世界でもまれ 10万組参加の大規模事業

調査の流れ

「エコチル」は「エコロジー(環境)」と「チルドレン(子ども)」を合わせた造語。親子を対象に、妊娠中から子どもが13歳になるまで、健康状態や生活環境・習慣などを追跡する。

11年1月から3年間かけて約10万組の親子が登録し、調査が始まった。参加率は、現在も約95%と高く、化学物質対策の分野では世界に類を見ない、大規模かつ詳細な調査となっている。

13歳以降の調査も

10万組の親子から得られた膨大なデータを基に、これまで140本以上の論文が学術雑誌に掲載されている。中でも注目されたのが、妊娠期の殺虫剤・防虫剤の使用と、子どもの出生体重や身長増加量の減少との関連だ。この報告を受けて、環境省は1月に成立した21年度第3次補正予算で6億円を確保し、ピレスロイド系殺虫剤が子どもの健康に与える影響について詳しく分析する。

同省環境リスク評価室の田中桜室長は、「この4月で調査に参加するお子さんは小学4年生を先頭に全員が小学生となる。生殖機能などを含めた長期的な化学物質の影響を探るため、13歳以降の調査のあり方も検討していきたい」と話す。

成果報告相次いだ記念シンポ

オンラインで開催されたシンポジウムの模様=2月21日

赤ちゃんの低出生体重は妊婦の血中鉛濃度と関連

2月のシンポジウムでは、調査に関わる研究者らがエコチル調査の歩みや、これまでの成果を報告した。

同調査が始まった背景について、名古屋市立大学大学院教授でエコチル調査運営委員長の上島通浩氏は、小児ぜんそくが平成に入ってからの20年間で3倍になったことや、食物アレルギーを持つ子が6年で2倍になるなど、「子どもたちを取り巻く化学物質の影響に注目が集まった」と指摘。

1997年、2009年開催の主要8カ国(G8)環境相会合などを経て、「子どもの健康と環境」に対する関心が国内外で高まる中、実施に至った経緯を紹介した。

米国での健康被害、年間37兆円の損失

国立環境研究所エコチル調査コアセンター次長の中山祥嗣氏は、最近の研究成果を説明。母親の血液1デシリットル当たりの鉛濃度が1マイクログラム上昇するごとに、赤ちゃんの出生体重が54グラム減少するとの調査結果を報告した。

また、米国におけるホルモンに影響する物質の健康被害は、年間約37兆円の経済的損失に匹敵するとしたデータを示し、「一人一人にとっては少しの影響でも、国や世界全体でみるととても大きな影響になる」とエコチル調査の意義を強調した。

パネルディスカッションでは、人気ユーチューバーで2児の母である「なーちゃん」をゲストに迎え、調査の研究成果をどう社会に還元していくかについて議論した。

なーちゃんは、海外でも日本と同様にエコチル調査が計画されたものの、参加者が集まらなかったり途中で挫折したケースもあるとして、「世界に誇れる日本のプロジェクト。もっとインフルエンサー(社会的影響力の大きい人)を使って発信すべきだ」と訴えた。

さらなる研究充実 後押し

公明党環境部会長・竹谷とし子参院議員

近年、子どもの花粉症やぜんそく、アトピーをはじめとするアレルギー症状や、発達障がいなどが増加していると指摘されています。

私たちの身の回りには化学物質を含む製品が多くあり、子どもたちの健康や成長にどのような影響があるのか、不安を感じている人は少なくありません。

こうした不安に応えるエコチル調査は、公明党の斉藤鉄夫副代表が環境相を務めていた当時に実施が決まり、調査研究の継続に向けた予算確保を党としても一貫して推進してきました。

子どもたちが健やかに成長できる環境、安心して子育てできる環境の実現へ、今後もエコチル調査の充実をしっかり後押ししていきます。

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