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2021年3月6日

コラム「北斗七星」

菊池寛は友の罪をかぶり、一高を退学処分になった。質入れしたマントは盗難届が出ていたのだ。親に累が及ぶと、泣きつく友を守る。人柄がしのばれる「マント事件」である◆きょう6日は「寛忌」。『父帰る』『真珠夫人』などの名作を残し、文藝春秋社を創業した。1948年3月、胃腸障害の快気祝いを開いた夜、狭心症で他界する。将棋、麻雀、競馬と勝負事を好んだ59年の生涯に、悔いなどあろうはずもない。と思いきや、「一生涯僕にとって、悔恨の種」と綴ったことがある。芥川龍之介の死である(『芥川の事ども』)◆芥川が服毒自殺する直前、菊池は「文藝春秋座談会」で同席した。出版を巡るゴタゴタで、友の悩みは深い。集いが終わって目が合うが、自分の乗った車が動き、菊池は芥川を励ます最後の機会を失った。一瞬の心のズレだった◆およそ100年後の今は、コロナが人と人の心の距離まで広げてしまったのではあるまいか。昨年の自殺者が、リーマン・ショック時以来11年ぶりに増加に転じたという。背景に深刻化する孤独の問題がある◆芥川は『孤独地獄』で、「(この地獄だけは)何処へでも忽然として現れる」と書いた。芥川賞を創設し、友の名を刻んだ菊池だが、彼もまた苦しんだに違いない。時を逃さぬ励ましと支えが必要なのだ。(也)

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