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【主張】高齢施設の集団感染 職員のPCR検査など対策急げ
緊急事態宣言が出ていた10都府県のうち6府県の解除が決まる中、高齢者施設におけるクラスター(感染者集団)の発生が増えている。対策を強めねばならない。
厚生労働省によると、同一の場所で2人以上の感染者が出た高齢者施設は、22日時点で1061件に上り、この2カ月間で2倍以上に増加した。医療機関や飲食店など施設別の内訳で最も多い。
同省の助言組織である新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードも24日、「高齢者施設でのクラスター発生事例も継続」との分析を公表し、警戒を呼び掛けた。
高齢者は重症化しやすいため、施設側はマスクの着用や室内の換気、消毒の徹底、面会の制限など感染防止に細心の注意を払っている。
それでもなおクラスターが発生している。入所者はもちろん、感染リスクに直面しながら仕事を続けている職員らを守るための取り組みを、一段と強化すべきである。
具体策の一つが、職員に対するPCR検査の徹底だ。
高齢者施設でのクラスターは、一人の職員の感染から他の職員や入所者に広がっていくケースが多い。PCR検査によって、感染者を早期に把握することは重要だ。
このため政府は4日、緊急事態宣言が延長された10都府県を対象に、職員への検査を集中して行うよう通知した。また、自治体の中にも独自に職員への検査を複数回実施する動きがある。
感染者や感染した疑いのある人が出た場合に備え、感染拡大を抑えるための手だてについて、最新の知見を共有することも欠かせない。
約1万1000の高齢者施設が加入する「全国老人福祉施設協議会」は、感染の疑いがある人への▽日常的なケア方法▽病院までの搬送の仕方▽感染の危険性がある部屋や通路などを区分けする「ゾーニング」——などの解説動画を無料で配信中だ。感染症専門医が監修しており、ぜひ参考にしてほしい。
政府は都道府県に対し、医師らによる支援チームを編成して高齢者施設に派遣するよう求めている。それぞれの施設の実情に応じた適切な助言で、高齢者施設のクラスター対策を支えてもらいたい。